十勝岳・トムラウシ・旭岳・愛山渓(十勝・大雪)

MR98 十勝岳・トムラウシ・旭岳・愛山渓(十勝・大雪)

date 1981/8/12-17
コース 望岳台~十勝岳~オプタケシケ山~トムラウシ~化雲岳~忠別岳~白雲岳~北海岳~旭岳~北鎮岳~比布岳~沼ノ平~愛山渓
実働 第1日1h、第2日6h40m、第3日7h30m、第4日7h、第5日7h30m、第6日5h30m、計35h10m
メンバー すうじい、カニ、O君
概要 十勝岳から愛山渓まで十勝大雪縦走、ユートムラウシ源頭のお花畑、忠別岳の夜明け。
行程 【8月12日】霧雨強風
美瑛=望岳台10:35→11:35十勝岳避難小屋(泊)

【8月13日】雨のち快晴
十勝岳避難小屋→3p→7:42十勝岳8:00→2p→10:00美瑛岳10:25→1.5p→11:50美瑛冨士避難小屋16:50→ベベツ岳南西コル(幕営)

【8月14日】晴
ベベツ岳南西コル→5:21オプタテシケ山5:50→2p→7:52コスマヌプリ8:10→3.5p→12:20ユートムラウシ源頭13:40→1.5p→黄金ヶ原1760M付近(幕営)

【8月15日】快晴
黄金ヶ原1760M付近4:10→2p→5:50トムラウシ6:30→2p→8:47化雲岳9:10→3p→11:30忠別岳石室(泊)

【8月16日】快晴のち曇
忠別岳石室3:40→1.5p→4:58忠別岳5:05→3p→8:13白雲石室8:35→9:32白雲岳9:55→10:41北海岳11:40→12:47旭岳野営地→旭岳→旭岳野営地(幕営)

【8月17日】晴のち曇
旭岳野営地3:15→2p→4:47北鎮岳5:00→3p→8:07半月沼畔8:35→9:35愛山渓11:15=12:10上川
記録  北海道遠征をして、知床の硫黄岳・羅臼岳縦走後、日高山脈の予定だったのだが、何故か集中豪雨に見舞われ、沢沿いコースの多い日高を断念し、十勝・大雪縦走をすることにした。カニの書いた記録を基に、すうじい版山行記をものしてみよう。

【8月12日】霧雨強風
 旭川で駅寝した翌日、列車で美瑛へ。バスで望岳台へ移動。レストハウスで食事後、強風とガスの雨の中、避難小屋を目指し、緩やかな「泥流スロープ」を登る。真正面から雨風を受ける上に、亜硫酸ガス・硫化水素ガスなどの火山性ガスに喉もやられて、苦しい登りであった。

 やっと辿り着いた避難小屋は、大きくしっかりした造りで、この天候下では有り難い。時折、ガスの合間から、先程のレストハウスがすぐ近くに見える。ちょっとガッカリだ。

【8月13日】雨のち快晴
 ガスの中を出発する。前十勝経由ルートは、噴火活動のため通行禁止で、新々噴火口の横を通る。しかし、ガスの中、「噴火口」という看板が見えただけだった。火山性ガスのせいで、咳が出て苦しいし、雨で火山灰がドロドロになり、一歩登って二歩下がる状態が続いた。

 この辺り、植物の全く見られない世界だ。砂地の判りにくい稜線を辿り、十勝岳山頂に至る。休憩後、美瑛岳への縦走に向かう。悪天だが、幸い道標がしっかりしていて、迷わずに済んだ。

 鋸岳の岩尾根は、左側の火口をぐるりと取り巻き、美瑛岳とのコルへ下る踏跡も、幾筋かに別れる。最低コルを過ぎ、美瑛岳近くまで来ると、ハイマツや高山植物が生えていて、心が和む。美瑛岳の東西にのびる主稜線に乗るとき、岩場の何処を越えるのか、踏跡がハッキリしない。

 美瑛岳山頂では、ツェルト用のポールとして、棒切れを拾い、以後旭岳までのお付き合いとなる。依然、展望は得られない。少し戻って下る美瑛冨士とのコルで、札幌中央労山パーティと会う。また、擦れ違うグループも二つ程ある。稜線上にも所々残雪があり、そのまわりには、お花畑が見られる。

 美瑛冨士避難小屋には、昼前に到着する。天気もあまり良くないので、泊まるつもりで中に入る。狭い小屋なので、武蔵工大WV(以後MIT)の集団までいるから、たまらない。我々は、隅の方に小さくなって座り、飯を炊き、天気図を取る。隣の札幌中央労山は、楽しそうに、トランプに興じている。我々は、膝を抱えて座っているだけ。

 天気図を見て、好天が約束されたので、すうじい決断。荷物をまとめ、16:50だが小屋を脱出する。石垣山を越え、ベベツ岳南西コルまで進む。十勝連峰、大雪、ニペソツ、雲海に沈む夕日など、心ゆくまで味わえ、またコマクサ咲き、ナキウサギ歌う、素敵なサイトである。

【8月14日】晴
 快晴だ。オプタテシケ山に登ると、雲海の上に、夕張、日高、大雪、増毛の山々が見え、さらに後方羊蹄山まで霞んでいる。東大雪の「塩見」(ニペソツ山のこと)も見えている。南東側には、十勝川上流の原生林が、黒々と広がっている。

 ここから一気に600m駆け下る。途中ガレ状になっていて、少々歩きづらい。下り切った所が、双子池キャンプ指定地だが、湿地状で、とても幕営できそうもない。コバイケイソウの花が、風に揺れている。

 コスマヌプリ山頂では、蛮声を張り上げる甲南大WVに出会った。美瑛川の対岸の崖下に、硫黄沼が見えた。高度を下げ、ハイマツ帯や笹・灌木帯を通る。カンカン照りになってきたので、汗だくで喉はカラカラになる。

 ツリガネ山を過ぎ、細かいアップダウンが続く。左手の1675Pを見れば、特異な岩峰がまるで鬼か悪魔の居城の如く、肩を怒らせている。右手のユートムラウシ源頭は、まさに桃源郷といった雰囲気で、池塘が点在し、蛇行する水流、お花畑が広がる。最低鞍部付近で大休止。右手のユートムラウシ源頭に下って、トカチフウロ咲くお花畑の脇で水を補給し、麦茶を湧かして、死ぬほど飲む。

 橋が落ちたため通行止となっている、三川台から白金温泉への道を見送り、黄金ヶ原に乗る。黄金ヶ原の名の由来と言われる、イワイチョウの黄葉は未だではあるが、一面コガネギクで黄色に染まっている。笹とコガネギク、エゾウサギギクが多い。新しい幕営跡地があったので、そこを今宵のサイトとする。

【8月15日】快晴
 トムラウシ南西の南沼キャンプ指定地まで登ると、そこには色とりどりのテントがあった。法政大WVを追い越して、城塞のようなトムラウシ山頂に立つ。ここの展望はピカイチだ。来し方の、十勝連峰の眺めが素晴らしい。雲海の中に、沼ノ原の大沼が銀色に輝き、黄金ヶ原に池塘が鏤めてあったりする。東側の火口跡には、雨水が溜まっている。

 山頂を辞して、北沼へと下る。ヒサゴのコルまでは、いろんな「庭園」が続く。池塘が散在し、高山植物も多く、楽園地帯である。丘の上の端っこに化雲岩のある化雲岳を過ぎ、五色岳手前の草原が、最高のお花畑であった。まだ所々に雪が残り、エゾノツガザクラ、アオノツガザクラ、エゾノバイケイソウ、ミヤマキンバイ、エゾノコザクラ、キバナシャクナゲ等、多くの花が咲いていた。このあたりからのトムラウシの眺めは、素晴らしい。

 五色岳で、笛吹きまくりのGAK騒音集団と擦れ違い、忠別岳石室へと下る。すぐ横に雪渓がある、きれいな小屋だ。今日は、午前中に行動終了となる。

 その夜、沢登りらしきグループが、酒を飲んで遅くまで騒いでいた。他のパーティに、「朝早い人もいるんだから、静かにしてくれ。」と注意されても、「なーに言ってるんだ。暗いうちに出発して、熊さん今晩は、だ。わははははは・・・。」と大声で騒ぐ。酔っぱらいには、処置無しである。羆のいる北海道で沢登りをする人だから、並の神経ではないのだろうと、変な納得をするすうじいであった。この三年後には、すうじいも並の神経でない(北海道の沢登りする)人の仲間入りするのだが・・・。

【8月16日】快晴のち曇
 宿泊者が多いので、他人を起こさぬよう気を使いながら、そうめんを茹でる。そうめんは革新的メニューだが、すぐに腹が減るという欠陥があった。まだ真っ暗な中、忠別岳へ登る。夕べの酔っぱらいではないが、まさに「熊さん今晩は」の世界だ。

 漆黒の夜空にあった、黄金色の大きな満月が、ペールがかった濃緑色のハイマツの化雲台地へと、落ちて行く。まさに、狩野派の絵を見ているようだ。徐々に明るくなってきて、オプタテシケ山、美瑛岳等が重なって見えている。前方には、平ヶ岳から高根ヶ原の、とんでもない広さの平面が続く。それが持ち上がったところに、白雲岳がある。旭岳には、笠が懸かっている。

 高根ヶ原の草原の中を、殆ど一直線に白雲石室へ向かう。この小屋は、広くてきれいな避難小屋である。小屋の前にはシマリスが出没し、O君が与えたナッツを、前足で抱えて囓る。小泉岳とのコルに一旦出た後、西へ進んで白雲岳へ。かなり古い火口の一端が、山頂となっている。

 ここから北へ、踏跡を辿って下ると、「立入禁止」の立札の裏側に出てしまった。するとそこに、見覚えのある面々がいて、「あれえ、そこ通っちゃイケナイんだよ。」と言われてしまう。札幌中央労山パーティであった。

 北海岳に登り、そこからはハイキングコースと化したコースを、旭岳野営地に向かう。間宮岳への登りで、「すみません、間宮岳はどこでしょうか?」と尋ねてきた親子連れは、手にはエアリアマップ。「表示がないのは、不親切だ。」とプリプリ怒っていた。間宮岳山頂には、ちゃんと分岐の道標が立っていたが・・・。

 野営地から、空身で旭岳を往復する。旭岳東面には、まだ雪が残り、北大WVがスキーで下ってきた。旭岳山頂は、今回の縦走で、最も印象の薄い山頂であった。

【8月17日】晴のち曇
 愛山渓温泉に入ろうということで、一時起床、三時過ぎに出発。北鎮岳の黒々としたシルエットが、巨大である。東方は雲海となっていて、お鉢平から流れ出た水が注ぎ込んでいるかのようだ。北鎮岳で展望を楽しみ、比布岳まで来ると、愛別岳へのガレた稜線が凄い。安足間岳・当麻岳方面の道を見送り、永山岳経由で、沼ノ平の池塘群を見下ろしながら下る。

 沼ノ平は、実際に足を踏み入れると、当時は、木道がまだ敷かれておらず、泥んこ地帯で、酷いところであった。半月沼畔で休憩する。水面に映った白い雲と青空をバックに、タチギボウシが絵になる。

 再び戻って、ポンアンタロマ川沿いに下り、一時間で愛山渓温泉へと至る。立派な「大雪山青少年の家」と、古くてくたびれた「愛山渓倶楽部」が並ぶ。くたびれた方で、温泉に入る。慌ただしく風呂から上がり、ビールを買って、バスに飛び乗り、上川駅へと向かう。

アルバム
【8月13日
十勝岳を振り返る】
夕日を浴びながら、石垣山を登る
美瑛岳・十勝岳
右はベベツ岳・オプタテシケ山かな
遠方に大雪山
美瑛岳・十勝岳方面
境山・下ホロカメットク山方面
ベベツ岳南西コル付近にて
雲海に沈む夕日
【8月14日】
オプタテシケ山付近から、十勝岳方面
ニペソツ山方面か
トムラウシ山~石狩岳
大雪山方面
銀杏ヶ原方面
後方はトムラウシ山か
ユートムラウシ川源頭
ユートムラウシ川源頭
ユートムラウシ川源頭
ユートムラウシ川源頭
ユートムラウシ川源頭
リンドウ
コガネギク
黄金ヶ原付近にて、コガネギクかな
黄金ヶ原付近にて、エゾウサギギクかな
【8月15日】
トムラウシ山頂から、十勝岳方面
トムラウシ山頂から、旭岳・白雲岳方面
トムラウシ山頂から、石狩岳方面
北沼
旭岳・白雲岳方面
天沼付近から、化雲岳方面
ヒサゴ沼
化雲岳東の湿原・池塘
五色岳西のお花畑にて
チシマリンドウ
ウルップソウ
エゾノバイケイソウ
チングルマかな
エゾノコザクラ
エゾノツガザクラ
オトギリソウかな
【8月16日】
忠別岳から、化雲岳・トムラウシ山方面
白雲岳・旭岳方面
忠別沼畔を行く
忠別沼
トウヤクリンドウ
コマクサ
白雲岳避難小屋でシマリス
【8月17日】
夜明け
北鎮岳のシルエットが大きい
北海岳方面
比布岳・安足間岳・鋸岳の挑戦
愛別岳
永山岳経由で、沼ノ平の池塘群を見下ろしながら下る
沼ノ平のモウセンゴケ
半月沼畔で休憩

MR94 硫黄岳・羅臼岳(知床)'81-08

MR95 斜里岳敗退(道東斜里)'81-08

MR96 雌阿寒岳・雄阿寒岳(道東阿寒)'81-08

MR97 チエサクエトンビ川一ノ沢・斜里岳(道東斜里)'81-08

MR99 後方羊蹄山(ニセコ)'81-08

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