白山・三方岩岳スキー縦走(加賀白山)

MR232 白山・三方岩岳スキー縦走(加賀白山)

date 1985/5/3-5 
コース 別当出合〜砂防新道〜エコーライン〜室堂〜御前峰〜室堂〜千蛇ヶ池〜2600M大汝峰南東コル〜ヒルバオ雪渓大滑降〜御花松原〜北弥陀ヶ原〜間名古ノ頭北西トラバース〜シンノ谷滑降〜念仏尾根〜妙法山〜三方岩岳〜三方岩トンネル東口〜白山スーパー林道〜中宮温泉
実働 第1日:4h45m、第2日:6h32m、第3日:6h30m、計:17h47m。
メンバー すうじい(単独)
概要 少し季節が遅すぎ、一部板担ぐ、スーパー林道危険。ふくべ大滝、姥ヶ滝。
行程 →:ツボ足、:シール、**:アイゼン、:スキー、\\:藪漕ぎ

【5月3日】 快晴
 鶴来7:03=7:30白山下7:50=9:10別当出合9:45→10:35中飯場10:45→11:50甚之助小屋12:2014:20室堂14:50→15:30御前峰15:5016:00室堂(泊)

【5月4日】 快晴
 室堂6:307:05 2620M肩7:157:40 2600Mコル7:508:05お花松原8:20→8:40 2349P 8:509:15 2110Mコル9:25→9:40 2168P 9:509:52 2100Mコル9:55→10:05 2090MP 10:1010:15 1980Mコル10:50→→11:50 2050M付近間名古ノ頭北方稜線12:1512:20 2010Mコル12:2512:40シンノ谷1660M付近12:50→13:00瀬領松13:15→→14:40 1762P 14:4514:55 1670Mコル15:05→15:25妙法山15:4015:50 1640Mコル16:20→16:40 1756P 16:4516:50 1690Mコル神庭池(泊)

【5月5日】 晴のちガスのち雨
 神庭池5:50→1780P 6:106:15もうせん平6:20→6:25 1770MP 6:301730Mコル6:35→7:00野谷荘司山7:057:15鶴平新道分岐7:20→馬狩荘司山北峰8:001660Mコル8:05→8:25三方岩岳(加賀岩)8:30→8:45 1600M肩8:559:10三方岩トンネル東口9:25→(10m休)→11:50ふくべ大滝12:10→(10m休)→13:50中宮温泉14:20=14:55白山下15:05=16:35金沢
記録  今年のGWは、どこを滑ろうか。4月に入って念頭にあったのは、東北山スキーシリーズ最後の大物:飯豊連峰と、日本の山岳スキー究極のエリア:立山のタンボ平滑降であった。立山では、滑りたいルートがたくさんあるし、レベルも高度で、今一つ準備と自信が不足だと思われ、今年は見送ることにした。結局、4月下旬に飯豊、5月上旬に白山を計画した。

 白山には申し訳ないが、「立山の代わり」という意識があった。スキー縦走には少し季節が遅すぎたが、ヒルバオ雪渓・北弥陀ヶ原・シンノ谷の滑降は楽しいものだった。この時期ならば、むしろ御前峰〜別山間の残雪豊かな所に、ベースを設けての春スキーが向いているだろう。

 なお、最終日の白山スーパー林道歩きは、結構危険が伴い、消耗でもあるので、コース選定ミスだったと思う。三方岩岳から東へ、尾根伝いに白川郷方面へと下山するのが、正しいエスケープであろう。時間が無くて、中宮温泉で入浴できなかったのが残念である。

【5月3日】 快晴
 ゆうべの夜行列車は、酷かった。急行能登に、発車間際に乗り込んではみたが、直江津まで立ちっぱなしだった。今年は雪が少ないためか、ラッキーなことに、別当出合までバスが入る。

 ここでスキーをザックにH型固定し、砂防新道を登り始める。路傍の灌木の枝が、板に引っ掛かって、消耗する。1Pで、中飯場の辺りまで来る。暑い。この先は、雪上のトレースを辿る。途中で板を担ぐのがイヤになり、細引でスキーを引きずる。ワンゲルから家族連れまで、GWの白山は、ルンルン気分だ。甚之助ヒュッテの周りには、数十人の老若男女が群れている。オレンジと「ゲンシホーコー水」(水筒に雪を詰めて自然に融かしたもの)で、喉を潤す。

 ここからシール登高に換え、少し登って右へトラバースし、苦労してエコーラインの尾根に乗る。不眠と暑さとで、クラクラしてくるぜ。何度も何度も小タルミを入れながら、弥陀ヶ原を突っ切り、室堂へと登る。途中、振り返り見た、南竜ヶ馬場周辺のスロープが、何と美味しそうだったことか!!

 雪の消えた2488にザックをデポして、板を担いで最高峰の御前峰を目指す。南面は雪が消え、岩々や這松が出ている。山頂から室堂までスキー滑降するには、南南東へ続く稜線の東側の雪を利用して、大きく東へ迂回してから、トラバース気味に下らねばならない。登り40分、下り7-8分で、室堂に戻る。

 直ちに天気図を取る。阪大WVのパーティが、小屋の横に設営したので、そのそばにツェルトを張る。豚汁の夕飯をたらふく食べて、今夜は早めに寝ることにしよう。

【5月4日】 快晴
 ヒルバオ雪渓上部の急斜面滑降のことを思うと、緊張するぜ。雪質が気になるところで、あまり早い時間に行くのは、考えものだ。6:30に室堂を出て、シール+シーアイゼンで2620M肩まで登る。シールを外して北への滑降は、ガリガリのクラストバーンで苦労する。

 大汝峰直下の2600Mコルから、いよいよ大滑降だ。東面なので、雪は堅くない。はじめは雪質や地形を確かめながら、慎重に斜滑降・キックターンを繰り返していたが、やがて大胆に弧を描いて、ザラメの大斜面を楽しむ。高度差100mあたりの平均斜度27度、最大斜度でも30度強というところだろうか。2350M付近から、左岸のトラバースに入り、お花松原の2260Mコルを目指す。いやあ、快適快適。振り返れば、自分のシュプールが、綺麗な波線を描いている。それにしても、とんでもない所から、降りて来たんだなあ。

 ツボ足で、2349Pまで登り返す。ここは頗る展望が良い。北弥陀ヶ原の緩斜面を滑降し、少々細くてややこしい尾根を下って、2110Mコルに至る。2114Pの次の2040MPからの下りは、ズルズル雪の急斜面で、大汗をかく。1980Mコルまで下って、大タルミ。間名古ノ頭の南面は雪が消え、藪漕ぎを強いられそうだ。

 ツボ足で踏跡を辿ると、すぐ雪の上を歩くようになる。トレースは間名古ノ頭西面をトラバースしており、ついついつられて、ついて行ってしまう。このトラバースには、大いに消耗させられた。藪を漕いでも直登していれば(かなりハードそうな急斜面の藪ではあったが)、快適そうな北尾根のダウンヒルが、待っていたのに。結局、1時間も掛かって、北尾根に出る。

 登ってきた二人組に、これから先の様子を聞く。板に乗って、2010Mコルまで下り、ここからオモ谷源頭のシンノ谷へと滑り込む。この谷は、浅くて緩くて、快適なゲレンデだ。途中、水の出ている所が一、二箇所あるが、簡単にクリア出来る。広い谷の水場、1660M付近でタルむ。水が美味しい!

 ここから瀬領松まで、板を引きずる。H型固定で板を担いで登り返す、念仏尾根の辛いこと。暑くて暑くて、クラクラしちゃう。折角だから、イジコクスキーに乗る。1762Pから1670Mコルまで滑った後、妙法山へは、ザレ岩の急登だ。妙法山の北面がまた急で、100mあたりの平均斜度が、36度の「雪壁」。高度感はあまり無いが、山靴スキーでは、少々気合が必要だ。何とか、1640Mコルまで下る。

 食いバテ気味なので、燃料を補給していたら、ウグイス君が啼いている。キックステップで、1756Pまで登り、スキーに乗って、1690Mコルまで下ると、右手に神庭池の凹地がある。先へ進む気力が失せたので、ここでツェルトを張る。

【5月5日】 晴のちガスのち雨
 6時前にサイトを発つ時、空はまだ晴れている。1780Pまでキックステップで登り、もうせん平へと滑る。先行パーティは、ここをサイトにしたらしい。ここから、真新しいアイゼンのトレースが続く。野谷荘司山の登りで、ガスが湧いてくる。山頂から、視界の悪い中、スキーに乗って東へ下る。

 鶴平新道分岐で板を外し、ザックに固定する。東側はガレて切れ落ちており、稜線の道沿いに、馬狩荘司山へ登る。北峰まで来ると、北面には雪があるので、コルまで滑降し、再びスキーをザックに固定して、三方岩岳を越える。加賀岩に先行パーティ二人を見るが、追い付けなかった。

 1600M肩(下降尾根分岐)までツボ足で下ると、あとは眼下のスーパー林道のトンネル東口まで、滑降できそうだ。スキーに乗る。ところが、スーパー林道があまり間近の足元に見えるので、なんだか林道まで一直線に滑落しそうでビビる。尾根の右側に落ちたら、まず助からないだろう。難所を階段下降でクリアして、あとはトンネル入口まで、一気に滑降しよう。100mあたりの平均斜度28度の、快適なダウンヒルだ。ああ、これが今シーズン最後のスキー滑降なのだな。

 9:10、ツアー終了。あとはウンザリのスーパー林道歩き。何とかなるさ、と歩き始める。三方岩トンネルを抜けると、白山山頂付近が見えた。あとは歩くだけ・・・という甘い予想は、次々に粉砕されて行くことを、この時は知る由も無かった。まずは、ブロック帯の通過。何箇所かあって、肝を冷やす。ちょっとした雪壁の上り下りは、しょっちゅうだ。

 幾つか目のトンネルでは、デブリをトラバースして中に入ったら、出口が無い!?上の方から光が射し込んでいるので、出口を塞ぐ雪壁を登り、一歩踏み外したら谷底行きの、雪壁トラバースを強いられる。ピッケルとキックステップで、大汗をかいてクリアする。最初のヘアピンカーブ付近で、「キュイ、キュイ」と声がする。見上げると、50度はありそうなザレた岩場に、カモシカ君が不安そうに立っている。目が合うと、慌てて、W級はありそうな所を駆け登っていった。

 落石の散乱するスーパー林道をさらに下る。急に、雨とも飛沫ともつかぬものが降ってくる。何だ?これは、2番目のヘアピンカーブにある、ふくべ大滝の飛沫であった。すんごい迫力だ。展望台で、しばし滝に見とれる。さらに林道を行く。立派な滝が多い。親谷(どす)出合の姥ヶ滝は、美しい末広がりのスダレ状滑滝だ。近くに露天風呂もあるらしいが、今回はパスだ。

 その先に、土石ガレの斜面をトラバースする恐怖の地点がある。その先の駐車場からは、既に除雪がしてあるらしく、安心して歩ける。中宮温泉まで来ると、観光客でいっぱいだ。時間が無くて温泉に入れないまま、バスで金沢へ出る。

アルバムT:第一日(別当出合〜御前峰〜室堂)

アルバムU:第二日(室堂〜ヒルバオ雪渓大滑降〜神庭池)

アルバムV:第三日(神庭池〜三方岩トンネル〜中宮温泉)

概念図

スキールート図1

スキールート図2

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