八甲田連峰スキー縦走(八甲田)

MR164 八甲田連峰スキー縦走(八甲田)

date 1983/4/09-11 
コース 酸ヶ湯〜仙人岱〜小岳〜高田大岳〜猿倉温泉〜猿倉岳(BP)〜ニセ駒〜駒ヶ峰〜櫛ヶ峰〜駒ヶ峰南面トラバース〜乗鞍岳〜ニセ駒〜傘松峠〜硫黄岳〜仙人岱(大岳往復)(泊)〜大岳〜井戸岳〜赤倉岳〜・1521〜鳴沢上部〜前嶽〜田茂萢沢〜ロープウェイ駅
実働 第1日:5h10m、第2日:6h43m、第3日:3h35m、計:15h28m。
メンバー すうじい(単独)
概要 春の南北八甲田連峰を駆け巡る、前嶽山頂昼寝。
行程 →:ツボ足、:シール、**:アイゼン、:スキー、\\:藪漕ぎ

【4月9日】 快晴
青森8:35=10:05酸ヶ湯10:15→10:50休11:0011:50仙人岱12:1012:30小岳12:4512:50コル13:0013:45高田大岳14:00→14:0514:40猿倉温泉入口14:5515:05猿倉温泉15:2515:45休15:5516:30休16:35猿倉岳17:2017:25猿倉岳直下BP(泊)

【4月10日】 曇
猿倉岳直下BP 6:35ニセ駒6:507:15駒ヶ峰7:257:40コル7:558:25櫛ヶ峰8:45コル8:559:30乗鞍北コル9:5010:30乗鞍岳10:4511:05乗鞍北コル11:2011:50ニセ駒12:0012:30傘松峠13:0513:50硫黄岳14:1014:13コル14:2314:33仙人岱避難小屋16:2516:55大岳17:0517:10仙人岱避難小屋(泊)

【4月11日】 ガスのち晴
仙人岱避難小屋7:208:10大岳8:258:35大岳避難小屋9:109:20→9:25井戸岳南峰9:35→9:45井戸岳9:5010:00赤倉岳10:3010:50 ・1521 10:5511:25前嶽手前コル東11:5512:20前嶽(昼寝)13:10 850M二俣13:30橋13:4213:50ロープウェイ駅14:20=14:30酸ヶ湯(入浴)15:30=16:55青森駅(泊)
記録  東北スキーツアーも、今年で三年目だ。'83東北春山スキーツアーシリーズ第一弾は、八甲田連峰に出掛けることになった。八甲田、それはまさに Mountain Ski Tour のために創られた峰々であった。四月の八甲田山群は、期待していた程の「全山真っ白」の状態ではなかったものの、除雪されたばかりの道路の両側は、4mくらいの雪壁となっていた。全山どこでもルートが採れそうなこの山域は、山スキーを育み続けている。

 ロートルの山スキーのパーティや、春スキーヤーたち、そして家族連れや小学生達もいて、春スキーシーズンが始まったばかりの八甲田は、日曜など結構な人出ではあった。しかし、それも山域の大きさから見れば、局所的な「点」に過ぎず、殆ど全コースにわたり、独占的に縦走できた。

 また行きたい。次回は誰か仲間と一緒にツアーしたいものだ。今度はどんなルートを組み合わせようか・・・そんな楽しみのある、素敵な所だ。

【4月9日】 快晴
 4月15日の十和田線のバス全線開通以前は、青森・酸ヶ湯間のバスは、朝と午後の1日2往復のみだ。朝の便に乗って、酸ヶ湯に着き、仙人岱目指して、ツボ足で歩き始める。春の陽光は強く、青い空と白い雪、ギンギラギンに焼けそうだ。時折振り返れば、岩木山の白い峰が、青空に高さを増して行く。

 1Pでシールに換え、やがて地獄沢の広い沢床に降りて登る。ひたすら登って、正面に小岳、左に大岳、右に硫黄岳の仙人岱に至る。立派な避難小屋があるのを確認する。大岳の大斜面を気持ち良さそうに滑降するスキーヤーたちを、羨ましく見上げつつタルむ。

 小岳を20分で登り、山頂にいたオジサンに写真を撮って貰う。コルまで、快適なザラメをパラレルで下る。小岳南東面は真っ白だ。高田大岳は、南西側は木が多く、上部ではハイマツが出ているので、ルート選択に気を遣う。やや北寄りに登る。山頂で、谷地温泉と猿倉温泉の位置がよく判り、974.4三角点まで下らないうちに、右手にトラバースして、猿倉温泉に上手く出ようと決める。

 ハイマツの中の夏道を少し下ってから、板を着ける。南東側大斜面、いよいよ挑戦だ。平均斜度27゚が標高差400mほど続く。左には、沢沿いに小雪庇状のもの、右手は樹林の近くにシュカブラ風の凹凸、雪質はブシャブシャのザラメ。ちょっと滑降しづらく、一度、本日初めての転倒。傾斜がやや緩くなった1100M付近で、右手の樹林に適当な斜面を見出して、トラバース気味に滑降する。あまり沢の横断もすることなく、・872付近の除雪道路に出る。

 道路両側の3m程の雪壁に、階段を作るのに汗をかく。猿倉温泉までは除雪しておらず、ツボ足のトレースを追って、橋を渡る。猿倉温泉では、二人が屋根の雪下ろしなどしており、来週ぐらいから営業開始らしかった。

 猿倉温泉の裏で、小沢が二俣になっていて、その中間尾根に取り付いて登る。猿倉岳までの登りは、ひたすら長く、夜行の疲れも出てきて、フラフラとなり、途中二回タルんで、やっと山頂に至る。17:20、既に風は冷たく、夕暮れも迫り、焦ってサイトを探す。アオモリトドマツの木陰に、ツェルトを張って潜り込む。

 22:00の気象通報後、「明日は雨かな・・・降らないうちに撤収して、視界の効くうちに距離を稼ごう」と考えつつ眠る。

【4月10日】 曇
 朝、目を醒ますと、曇ってはいるが視界は良好だ。ニセ駒を通り、駒ヶ峰までシールで登る。DAWV(防衛大ワンゲル)の旗竿が残っている。シールを外して、櫛ヶ峰とのコルまで下る。櫛ヶ峰の東側大斜面が、大雪庇を伴って、威圧的にのしかかる。ゲエッ!!あんな所登るんかいな!?ここの急登は、ルート選択が重要な所だが、例のDAWVの旗竿が正解ルートを教えてくれる。うまく北尾根に乗り、雪庇に乗らぬように注意しつつ、上岳(櫛ヶ峰)山頂に至る。

 シールを外して、南東側の尾根を少し下り、北尾根の雪庇の下に回り込んで、東側大斜面を北へとトラバース気味に大滑降。もし転倒したら、ちょっと回復がややこしそうなので、緊張する。旗竿のある付近まで来ると、コル付近に5〜6人のパーティが見えたので、フォームを気にしながら、パラレルで滑降する。コルのパーティはロートル山スキー集団であった。

 コルからは、駒ヶ峰南面をトラバースして、ニセ駒と乗鞍岳とのコルに上手く出ようというわけだが、そのためには高度をロスしてはいけない。スケーティングと斜滑降、階段登高を交えつつ、目標のコルに出る。さて、乗鞍岳の登りだ。山頂直下北面に、良い斜面があるが、さほど広くはない。登り40分、下り20分でコルに戻る。

 今度は北のニセ駒目指して登るが、30分で到着。ここで地元のスキーの会パーティに遭う。仙人岱の避難小屋の地下に、非常用の燃料と食糧がデポしてあるそうだ。広い緩斜面から尾根に乗って、傘松峠まで30分の滑降だ。今日から、除雪道路への一般車の乗り入れが許されたとのことで、ひっきりなしに乗用車が通る。車道の両側の雪壁は、傘松峠では4-5mあろうか。北八甲田側へ渡るべく、除雪道路へ下る所を探すのに手間取る。

 無事道路を横断し、硫黄岳の南東側斜面を見上げると、数十人のスキーヤーが目に入る。あーあ、まるでピステじゃないか。ちょっとイヤになったが、あの山を越えないと、仙人岱の小屋に入れない。気を取り直して、春スキーヤーの列に混じって、シールで黙々と登り始める。石倉岳の東側沢状を登り、硫黄岳南東面を登る。板を担いだ人々より、重荷を背負うシールの僕の方が速い。

 いつの間にかギンギラになった陽光で、汗だくになる。硫黄岳山頂で、咳が止まらず閉口する。シールを外して、コルまでひと滑りする。シールをまた着けて、仙人岱避難小屋へ入る。とにかく、果て狂ったので、お茶を沸かして行動食を腹に入れる。たまたま小屋にいたスキーヤーと話をしたりして、ウダウダする。

 16:00の気象通報後、大岳をハントし、南大斜面を味わうことにする。明日、万一悪天になって、酸ヶ湯にエスケープしても、主峰の大岳だけは登ったことにしておこうという意味と、大岳南面を滑降するなら、今日しか無いことからである。

 ヤッケを着、シールで登る。空身だとペースは速い。腐ってズルズルの急斜面を斜登行するのは、バランスが重要だ。火口まで登り、もうひと登りで山頂だ。シールを外して、ポケットに押し込み、下り始める。火口を回って、南側大斜面の上に出る。17:00を過ぎて、もう山中には誰もいない。僕一人の大岳南面大滑降。わずか2-3分で、仙人岱の平坦地形まで降りきる。やった、やった。大いに満足して、避難小屋に戻る。

 疲労のせいか、あまり食欲が無く、しばらくシュラフで寝たふりした後、夕食にする。

【4月11日】 ガスのち晴
 朝起きて、外を覗くと、ガスだ!ホワイトアウトか。これはややこしいぞ。仙人岱から大岳へと、昨日と同じルートをシールで登る。大岳山頂から北面を、旗竿に導かれて、大岳ヒュッテまで滑降する。井戸岳へは、東側の尾根伝いにシールで登り、火口に沿って北上するのは、ツボ足となる。山頂からシールで、赤倉岳へと登る。

 赤倉岳山頂でタルんでいると、にわかに明るくなり、陽射しの暖かみが感じられたかと思うと、頭上に青空が広がる。キョロキョロしていると、高田大岳と大岳が姿を現し、やがて井戸岳の全貌が明らかになる。やったね。また天は我に味方せり。これで、前嶽まで行けるぞ。

 大タルミして写真を撮ってから、北西に続く尾根をスキーで下るが、すぐにハイマツが出て苦労する。北東側は崖で、雪庇になっている。ついに諦めて、ツボ足になるが、少し行くと、ズボズボの腐れ雪で、腰まで落ち込んだりして難渋する。スキーを着けて、大いに苦労して階段下降でゆく。・1521を越え、前嶽へのルートを検討していると、田茂萢岳からこちらへ向かってくるパーティが目に入る。

 鳴沢源頭を目指し、デコボコ腐れモナカ雪の斜面を、何度か転倒して下る。やがて快適なザラメの沢状ルートに出て、ゴーグルを拾う。やっと鳴沢上部に入って、左岸寄りを滑降して行く。空は晴れ、風は無く、音も聞こえず、あたりは真っ白。暑い。1200M付近まで下り、早く沢を離れて左岸側に乗りたいのだが、雪壁は急で、なかなか沢床を脱出できず、大いに汗をかく。結局、前嶽手前のコルの東側、少し下った所に出てタルむ。ここでシールを貼って、前嶽を目指す。暑いので、ゆっくりゆっくり登る。

 さあ着いたぞ。八甲田最後のピークだ。まだ正午過ぎなので、山頂に銀マットを拡げ、上半身裸になって日光浴をする。長閑だ。時折、赤倉岳や田茂萢岳のガスが切れて、姿を見せる。ロープウェイを利用したスキーヤーの声が、田茂萢沢方面から聞こえる。でも、ここは、俗界から隔絶された島だ。「ヒン・・・ヒン・・・」と鳴く小鳥の声が、長閑さをもり立てる。

 50分もタルんでから、スキーを着ける。コルまで下り、ここから田茂萢沢へと滑降する。フォレストコースはすぐに右岸へ乗ってしまうが、無視して沢を下る。さほど快適な雪ではない。850M二俣(畚沢出合)から水が顔を見せるので、右岸を下る。・689付近で車道に達するので、沢を渡って、ロープウェイ駅に辿り着くフォレストコースに合流する。

 酸ヶ湯行のバスに乗り、酸ヶ湯温泉の総檜造り混浴大浴場「千人風呂」につかってから、同じバスに乗って青森に出る。バスの中でビールが効いてきて、快適に居眠りする。酸ヶ湯は本当に酸っぱくて、目にはいるとしみて痛い。青森駅での駅寝は、連絡船の待合室が快適であった。さあ、明日は、津軽富士:岩木山を滑るぞ。

スキールート概念図とアルバムブログ
その1:スキールート概念図
その2:仙人岱から高田大岳・猿倉岳
その3:櫛ヶ峰・乗鞍岳・硫黄岳〜前嶽

MR165_ '83東北スキーツアーシリーズU:岩木山大黒沢(弥生コース)滑降(岩木山)'83-04

MR170_ '83東北スキーツアーシリーズV:鳥海山山スキー(鳥海)'83-05

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