北沢峠・仙丈岳・塩見岳・三伏峠(南ア)

MR77 北沢峠・仙丈岳・塩見岳・三伏峠(南ア)

date 1981/5/5-7
コース 北沢長衛小屋〜北沢峠〜仙丈岳〜三峰岳〜熊ノ平〜塩見岳〜三伏峠〜奥沢井
実働 第1日8h25m、第2日8h35m、第3日9h08m、計26h08m
メンバー すうじい、エビ、カニ
概要 [春合宿継続隊]残雪期の縦走。仙丈岳は好天だったが、後半の三峰岳・塩見岳は天候悪化。
行程 【5月5日】快晴 (はアイゼン歩行)
北沢長衛小屋5:05→5:17北沢峠5:276:27四合目6:377:25タコ滑り7:40小仙丈7:538:48仙丈岳9:25大仙丈9:50→12:17伊那荒倉岳12:27→高望池12:37→13:202499P 13:48→横川岳14:47→野呂川乗越15:11→15:20 2315.3P(幕営)

【5月6日】雪降ったり止んだり
2315.3P 5:258:40三峰岳8:50三国平9:30→9:50熊ノ平小屋10:20→北荒川岳13:10→14:40雪投沢源頭(幕営)

【5月7日】ガスのち曇のち雨
雪投沢源頭5:50塩見岳7:078:40休8:57→9:50 2608P 10:08→本谷山10:30→11:25三伏峠11:48→12:43休12:53→13:43橋13:48→14:20塩川小屋14:55→15:40樺沢小屋16:45→17:03奥沢井=(タクシー)=伊那大島
記録  延べ17名参加の春合宿。下山する本隊に見送られ、継続隊3名は仙丈岳から塩見岳へと向かう。

【5月5日】快晴
 今日下山する本隊の諸君に声援されつつ、天場を出発する。全身に活力が漲る。北沢峠でアイゼンを装着し、3Pで仙丈岳直下の食料デポ地点に到達する。デポのビニール袋発掘に少々手間取る。

 仙丈岳から大仙丈へと向かう。下りは快適な雪のスロープ。大仙丈カールは、スキーをやりたくなる。大仙丈の登りは、半分岩々。大仙丈からの下りは、夏道が野呂川側の雪壁下に隠れていたので、岩稜を下り始め、アイゼンを外して、しばらくクライムダウンする。岩は浮いているものが多く、ガラガラと落石を頻発する。おかしい、ヤバ過ぎる。このまま下って行くと、急な沢へ落ち込んでしまう。東へのトラバースを指示し、やっとのことで、傾斜の緩い尾根上へ出る。振り返ってみると、先程下っていた岩稜は、数本のリッジ・ルンゼと共に、三峰川の支流、兎台谷へと落ち込んでいる。げえっ!我々はあんな所を下っていたのか!

 しばらく、ハイマツ帯を行く。やがて樹林帯となる。伊那荒倉岳は、名前に似ず、木に覆われた目立たぬバカ山だ。これを下った高望池は、雪だまりであったが、二人パーティが休んでいた。「仙丈岳に登ったら、急に北岳に行きたくなって・・・」と語る彼らは、大学山岳部の上級生かOBと見受けられた。

 ここから、横川岳までが、意外と長い。途中、2499Pのハイマツピークで大休止する。展望を堪能する。横川岳から野呂川乗越までの下りは、腐った深雪で、ズボると、腿まで填って苦しい。風邪気味のカニが遅れる。やっと乗越に至るが、適当なサイトが無い。更に少し登って、オオシラビソ等の針葉樹の疎林の中の、2315.3三角点の肩状地の雪上に設営する。
 体調の悪いカニを先にテントに入れ、天気図係とし、エビとすうじいで夕食を準備する。水用の雪ブロック切り出しの武器として、角形コッヘルが大変有能であった。

【5月6日】雪降ったり止んだり
 撤収したサイトから、アイゼンを着けて、真面目に3Pで三峰岳。2P目に、昨日の二人パーティのツェルトに出くわす。「昨夜熊が出た」とかで、出発する様子がない。このあたりから、イヤらしい雪の斜面が出てくる。トラバースしたり、直登したりして進む。三峰岳直下の、最後の岩と雪のミックスは、なかなか手強い。半分ほど、間ノ岳側にトラバったあと、直登する。

 不思議なことに、三峰岳山頂で、風と雪が一時止み、喜んでタルむ。すぐに、再び吹雪き出す。湿雪がベチャベチャこびりつくので、全員眼鏡を外して、岩々の痩せ尾根を、ひたすら下る。意外と寒くない。いつしか、アイゼンの小気味よく効く雪の斜面となり、「まるでスキー場だぜ」と、快適にパカパカ駆け下る。相変わらず、小雪混じりの風が、ビュービュー吹いているが、全く寒くは無いのだ。広々とした三国平で位置を確認し、更に下って行く。雪が腐り始めたので、アイゼンを外し、熊ノ平目指して、駆け降りる。再び眼鏡をかけたすうじいが、樹林の中に熊ノ平小屋を発見し、小屋で30分の大休止。まだまだ先は長いのだ。

 小屋をあとにし、雪の斜面をヒイコラ登って、稜線に出る。ここから雪投沢源頭までの縦走が、長くてシンドイものであった。トップのカニは、風邪をひいているにも拘わらず、「是が非でも、塩見の下まで行かねば」という気持ちが強いのか、脇目も振らず、ビンビン歩いて行く。セカンドのエビは、例の調子で、前の人間にピッタリくっついて行く。ラストのすうじいは、遅れてヒイコラ追い掛ける。こんな調子で、現在位置の確認が、いつしか疎かになってしまった。新蛇抜ノ頭の位置がよく判らないまま、ひたすら南へ南へ、稜線とトレースを追う。

 次第に風が、冷たく強くなり、雪が吹き付ける。広い雪の斜面を、南西方向に向かって、ハアハア言いながら登って行くと、突然、目の前がスッパリ切れ落ちた。稜線は左右、すなわち南北に続き、北側が高くなっている。「この地形は、北荒川しか考えられん」というわけで、北へ少し戻って、北荒川岳の山頂を踏み、南へ向かう。コルまで来ると、全員冷たい風に凍え、疲労も甚だしい。この冷たい強風の下、稜線通しに行くのは無理と見て、東面の樹林帯をトラバースする。1P分ほど進み、風のほとんど来ない所でタルむ。

 行動食をガツガツ食べて、若干人心地つく。ガスが切れた瞬間、雪投沢源頭部が目に入る。ここから斜めに登って、稜線へと出るつもりだったが、何故かカニは、雪投沢源頭のコルを目指し、まっすぐトラバースして行く。次第に傾斜が急になり、雪は硬くなって、キックステップがほとんど入らなくなって、バランスで進んで行く。下手に声を掛けると、注意力散漫になって危険だと考え、カニの判断に任せる。なんとか無事にトラバースを終え、雪投沢源頭の稜線に出る。

 さて、何処に設営するかが問題だ。コルの稜線の東側、雪庇状雪の付け根のあたりを、50cmほど掘り下げて、何とかテントを張る。ピッケルで、ハイマツ混じりのザラメ雪を掘るのは、大変な重労働で、風邪のカニは、ゴホンゴホンやりながら、あのエビは、一言も喋らずに、全力投球だった。あんなに必死に働くエビ・カニを、すうじいは見たことがない。なんとか16:00前に設営し、まず風邪で悲惨なカニが中に入り、天気図をとる。張綱をピッケル・アイゼンでアンカーし、全員テントに入る。やっと一安心。

 夜中に、テントが潰れかかっているのに気付き、ポールを張り直し、アイゼンのアンカーを埋め直す。

【5月3日】ガスのち曇のち雨
 朝、ガスが吹き飛んで切れる瞬間、その姿を見せる塩見岳胸壁の峻厳さ。モノクロームの世界。行くぜ。アイゼンでの急登が続く。北俣分岐で、カニが北俣方面のトレースに引きずられそうになる。トレースの多少に、騙されてはいけない。現在位置確認後、塩見岳への登りにかかる。最後の登りは、ブサブサの腐れ雪で、アイゼンを団子にし、バランスの崩れを誘う。ガスの中ながら、切れ落ちた南面が見えるだけに、イヤらしい限りだ。アイゼンに注意を喚起する。塩見岳東峰(鉄兜のポッチピーク)には、TUSAC(東大スキー山岳部)の遭難プレートがあった。

 塩見岳山頂(三角点のある西峰)に至り、下り始める。下りはほとんど雪はないが、所々岩陰に雪壁が残る。一箇所、トラバースにザイルを出すが、もっと楽なルートがあったようだ。あとは、バンバン下る。アイゼンを外し、権右衛門岳のトラバースでは、深雪にトレースを踏み外して苦労する。やがて、稜線に出て少しで、2603手前のP。ここで、キツネを見掛ける。さらに、本谷山を越え、ホトホト嫌になりながら、痛い足を引きずって進む。

 三伏峠小屋まで来ると、さすがに人間が居る。三伏から3Pで、塩川小屋。冬期小屋で、雨をしのぎつつ大ダルミ。樺沢小屋まで来ると、オバチャンに呼び込まれてしまう。雨の中、あたりの新緑が、瑞々しい。タクシーが来るまで、ストーブにあたり、お茶を飲み、オバチャンの話に耳を傾ける。お茶請けの美味かったこと。

 何故かタクシーは、少し下った奥沢井までしか入らず、結局20分程更に歩かされた。全員足が痛く、ヒイヒイ悲鳴を上げながら歩いた。運転手が女性だったことも覚えている。伊那大島に出て、ヒヤヒヤしっぱなしだった継続隊も、無事帰京できたのであった。塩見よ、さらば!また秋に会おうぜ!  

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アルバム:仙塩尾根

MR75_ 夜叉神峠・鳳凰三山・浅夜峰・北沢峠(南ア)'81-05

MR76_ 仙丈岳(南ア)'81-05

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