槍穂高東面の池巡り(北ア)

【注意!】天狗原コル〜横尾右俣〜左俣〜北穂池〜東稜ノコルは、一般コースではありません。
      五六ノコル〜奥又白池〜下又白カール〜瓢箪池も、一般コースではありません。
      どちらかと言うと、結構危ないコースですので、あくまでも自己責任で考えて下さい。

date 2016/8/7-13 晴、快晴、晴のち一時雨、(晴、晴)、晴のち曇、曇のち晴
コース 上高地〜槍沢ロッジ〜天狗池〜天狗原コル〜横尾谷二俣〜左沢右岸取付尾根〜北穂池〜東稜ノコル〜涸沢〜五六ノコル〜奥又白池〜瓢箪池〜明神橋〜上高地
実働 第一日:3h55m、第二日:9h48m、第三日:11h05m、第六日:11h30m、第七日:4h15m、計:40h33m。
概要 天狗池・北穂池・涸沢池・奥又白池・瓢箪池を繋ぐ、欲張りコース。
メンバー すうじい(単独)
行程 →:登山道、\\:藪漕ぎ・踏跡不明、:溯下降、=:車。
【8月7日】 晴
新宿7:05=12:00平湯12:30=12:55上高地13:05→13:48明神館13:53→14:40徳沢14:50→15:45横尾15:50→16:00一ノ俣16:10→17:30槍沢ロッジ(泊)
【8月8日】 快晴
槍沢ロッジ4:15→水俣分岐5:25→5:35小休5:50→6:50天狗原分岐7:10→8:13天狗池8:20→8:55雪田岩陰9:10→9:45天狗原コル10:00\\11:20岩々転倒11:45\\12:30黄金ヶ原13:25\\14:55小休15:0016:40二俣(泊)
【8月9日】 晴のち一時雨
二俣7:008:15小休8:209:50北穂池滝下10:0011:20左沢右岸取付11:40\\12:10台地12:20\\13:45小休13:55\\ルンゼ14:40\\15:05ルンゼ上15:20→\\16:50東稜のコル16:55\\南稜登山道18:15→19:20涸沢(泊)
【8月10・11日】 快晴・晴
涸沢定着
【8月12日】 晴のち曇
涸沢4:45→5:45小休5:50→7:05五六ノコル7:35→8:20岩場8:50→\\9:55奥又白谷右岸10:10\\→11:25奥又白池11:38\\11:48水場12:23\\12:55茶臼コル13:30\\下又白カール水場15:15\\16:35最後のガレ小沢16:50\\18:35東稜登山道18:45→19:03瓢箪池(泊)
【8月13日】曇のち晴
瓢箪池7:20→8:10森の先8:20→\\8:50宮川尾根のコル8:55\\→9:40小休9:50→小屋裏10:43→10:55明神池11:00→11:10明神館11:20→12:15上高地12:45=13:45新島々14:05=自宅
使用装備 軽登山靴、コンデジ、GPS、ストック、ヘルメット、スリング、細引、コンロ一式、シュラフ一式、マット、アイスハンマー、テント一式、食料
不用装備 ハーケン
記録  「槍穂高東面の池巡り」をメインテーマとして、3年ぶりの涸沢定着に出掛けた。昨年秋、某山岳部の学生さんたちと、梓川横尾谷左俣・北穂池・奥又白池を訪れたのだが、悪天候に邪魔され、瓢箪池を断念せざるを得なかった。そのリベンジも兼ねてのコースである。

【8月7日】 晴
 夜行バスを避け、新宿朝発の高山行高速バスに乗り、平湯乗り換えで上高地に入る。インバウンド客も含め、上高地は大賑わいだ。明神館前では、下山に使う予定の瓢箪池〜明神のコースを見上げてみる。

 重荷の割には、まあまあのペースで、横尾山荘に至る。ここから先は、少しずつ山道らしくなってくる。'08,'09,'10,'12年と、よく訪れた一ノ俣谷を渡り、休憩を入れる。木製だった二ノ俣橋は、流されたのだろうか、仮設風となっていた。

 17時半には、槍沢ロッジに到着する。意外とすいていたのは良かったが、緊張のためか、寝付きが悪かった。

【8月8日】 快晴
 槍沢ロッジを発ち、しばらくヘッドライトを点けて行く。ライトが不要になる頃、ババ平のテント場にさしかかる。撤収をしている人々の合間を抜けて、登山道を進む。

 広河原状になった槍沢の左岸沿いを行くと、右岸の横尾尾根に滝が懸かっている。雪に磨かれたスラブ状岩壁に、二筋の流れが見える。

 北鎌へのアプローチの水俣乗越に向かう道を右に分け、大曲がりを過ぎると、朝日が当たるようになる。登山道の傾斜も徐々に増し、次第に暑くなって来る。槍ヶ岳方面から下りて来る登山者も、多くなる。

 天狗原分岐に到達する頃には、猛烈な暑さでバテバテになっていた。僅かなブッシュの陰で、荷を下ろし、行動食と水分を口にする。天狗原へ向かうトラバース道に入ると、登山者は少なくなる。マイペースで歩けるようにはなるが、重荷と暑さが身に応える。

 やっと天狗原の一角に入り、天狗池で逆さ槍を撮影する。再びのろのろと天狗原を進み、雪田脇の巨岩の陰で小休止する。

 やがて天狗原のコル至る。見下ろせば、右俣カールの雪田は、驚くほどの小ささだ。南岳から横尾谷二俣へと派生する、・2652の尾根越しに、北穂高岳が望まれる。北穂池の台地を遠望しても、殆ど雪田が残っていない。この山行、水を得るのに苦労しそうだ。

 天狗原のコルから、急傾斜の不安定な草付斜面を、慎重に下降する。岩は浮いているし、荷重なので、時間がかかる。傾斜が緩むと、今度は夏草が生い茂り、足元の岩が隠れて、始末に負えない。もんどりうって転倒した大岩の陰で、荷を下ろして休憩する。

 夏草の呪縛から逃れて、雪田跡の岩々帯になれば、しんどいながらもペースは上がる。カール底に僅かに残る雪田から振り返れば、雪の殆ど無い右俣カールが広がっている。

 モレーンの林を強引に藪漕ぎして抜けると、黄金ヶ原の草地に出る。すぐ脇に水流があり、大休止とする。設営出来そうな場所もあり、ここで今日の行動を打ち切りたかった。しかし翌日中に涸沢に定着する必要があったため、二俣まで下ることにする。

 疲れ果てた脚を騙しながら、右俣を下降して行く。6m滝は、左岸の残置ロープを利用して巻く。16:40、二俣到着。直ちに設営地を探すが、なかなか適所が見付からない。やむなく、流れのすぐ脇の、上が平らな大岩上にテントを張る。雨、降るなよ。

【8月9日】 晴のち一時雨
 朝、体調が悪かったら、涸沢出合まで下り、右岸のガレルンゼを登山道まで登り返すつもりだった。だが意外と元気だったので、欲が出てしまった。

 見上げても雪渓が見えない、左俣に入る。乾いたゴーロを、ひたすら登って行く。2250Mくらいまでは、全く雪が無い。

 北穂池ノ滝が見えるようになる辺りで、雪渓が出現する。上に乗り、左岸沿いを慎重に進む。雪渓が中央で二分したら、汚れた左岸沿いの片割れに乗り、適当な所で不安定なガレ斜面に着地する。

 雪渓をクリアすれば、北穂池ノ滝だ。暫し、その姿を堪能する。奥二俣の「軍艦岩」を見て、左沢に入る。奥二俣から振り返る北穂池ノ滝も、なかなか味がある。既に、北穂池の台地に雪田が殆ど無いのを遠望しているので、滝の水量が少ないのも、頷ける。

 左沢右岸の岩屑ゴーロの奥に涸棚を見て、その左手斜面を登り、取付尾根に取り付く。今回は、取付尾根取付から台地まで、30分かかった。草地の草丈も高く、歩きにくい。天狗原のコルから遠望した通り、台地に雪田はごく僅かだ。

 ブッシュピークの鞍部から見下ろす一ノ池は、やはり殆ど干上がっていた。鞍部から草付斜面を右へとトラバース気味に下り、涸沢方面を目指す。草付の中の涸れゴーロを登り、岩々帯を経て黙々と登る。ルンゼへと入る草付トラバースは、踏跡不明瞭となっていた。

 ルンゼの中も雪は全く無く、逆L字の白ペンキ印は、すぐに見付かる。右岸の崩れ易い斜面を登っていたら、雨が降り出す。小尾根に乗る所で、雨具とザックカバーを装着する。その後は、ひたすら登る。踏跡は幾筋も付いており、悩ましいが、迷うほどではない。

 ・2814付近で南へと向きを変え、東稜のコルを目指す。10Mほど下に出て、登り返す。急な草付斜面を慎重に下降し、例の3m涸棚まで下ると、昨秋残置したテープスリングを見付ける。使えそうなので、一段下の岩角に引っ掛け、細引をダブルにして支点とする。

 難所はクリアしたが、浮岩だらけのガレ斜面は、疲れた脚には厳しかった。北穂沢のゴーロ斜面を横断し、南稜登山道に合流した後も、全くペースは上がらない。涸沢に着く頃には、真っ暗な中、ヘッドライト頼りにトボトボ歩くこととなった。

【8月10日】 快晴
 涸沢二日目早朝、朝焼けがきれいだ、との声に、デジカメを持って外へ出る。見慣れた景色ではあるが、やはり感動する。涸沢槍が、立派である。ゴジラの背と、昨日下って来た、東稜のコルからのY字ガレルンゼを見上げて、苦笑いをする。

【8月11日】 晴
 涸沢三日目の夕方、涸沢池を見に行く。池周囲の雪は完全に消えていて、夏の涸沢定着では初めての光景だ。岩々の合間の水溜り、といった風情で、少々物足りない。

【8月12日】 晴のち曇
 早朝、涸沢を後にし、奥又白池経由で瓢箪池を目指す。五六のコルへ向かう途中から振り返れば、、カラフルなテント村と、白く光る涸沢池が目に入る。

 五六のコルから奥又白池を望めば、随分と距離があり、まだまだ大変そうだ。奥又白池畔に、黄色のテントが一張見える。五峰を見上げて、前穂北尾根も、もう一度は登りたいものだと思う。

 コルから草付ルンゼを少し下り、トラバース踏跡に入る。早速、ヤバいザレ急斜面に差し掛かる。ここを慎重に通過して、少し登り返せば、尾根道の下りとなる。

 「下降尾根」の途中で、奥又白池畔のテントの主と思しきクライマーパーティと出逢う。水場情報を尋ねると、「水流れてますよ」とのこと。「担いだ水、捨てちゃってダイジョブですよ」とは言われたが、水は捨てずに、贅沢に飲みながら行こうと決意する。

 「下降尾根」の岩場を、細引利用で下り、やがて「目標ルンゼ」に入る。ザレた左岸沿いを下り、最後に右岸に渡って、草付斜面のトラバース踏跡を下る。雪渓の消えた奥又白谷ゴーロ斜面を横切り、対岸の藪斜面の正解取付を探すが、見付からない。やむなく、昨秋登ったガレより20M程下の、極めて薄い踏跡を登る。最後は、藪漕ぎをして、昨年辿った踏跡に合流する。

 薄い踏跡を拾いながら、さらにトラバースを続けると、草付斜面で一段下の明瞭な踏跡に出る。やがてパノラマコースから分かれて登って来た中畠新道が合流する。最後のひと踏ん張りで、奥又白池の別天地に飛び出す。晴れると、本当に気持ち良い場所である。「下降尾根」で出逢ったパーティのものと思しき、黄色のテントが一張あった。

 茶臼のコルへのトラバース途中、水場を求めて涸窪を下る。水流のある沢水は、汚染されていそうなので、辛うじて枝沢状になっている湧水を汲む。少し藪を漕いで、茶臼のコルに出る。シートを被り、陽射しを避けて、昼食とする。明神主峰東稜を登るパーティの声が聞こえる。

 コルからは、草付の窪状を下って行く。やがて涸れゴーロ状となる。適当な所で、右手の草付斜面をトラバースしながら下る。いつもは雪渓が残っている本沢は、不安定なザレゴーロとなっており、慎重に渡る。右岸のザレた岩壁から、水が湧いている。

 右岸沿いに少し下り、崩れやすい斜面を騙して登る。最初の灌木帯は、密藪沿いに、高巻くように岩々草付を登る。、次の灌木帯は、高巻けないので、密藪を漕いで横断する。草付斜面に出て、開けたザレルンゼに下降する。

 開けたザレルンゼを下り過ぎないように横断し、岩壁下の草付をトラバースする。最後のガレ小沢に出て、安定した石の上で小休止する。大崩壊手前の急な藪尾根も、もう目と鼻の先だ。急なガレ小沢を少し登り、左手の藪尾根を目指す。藪尾根手前の急な草付斜面は、不安定で滑り易く、容易には登れない。傾斜が比較的緩い所を、なんとかトラバースして、藪尾根に接近する。

 藪尾根の立木に接近出来れば、枝と根にしがみ付いて、強引に登攀開始だ。荷が重く、また引っ掛かるので、腕力および全身の筋力を要する作業が続く。気合と根性で頑張るが、時折、気が遠くなる。岳樺の幹に跨って一息入れるのが、精一杯だ。

 ウンザリする頃、藪が薄くなり、東稜の登山道に出た。ザックを下ろしたら、着けていたはずのストックが無い。藪の神様に奉納してしまったのだ。明日の急降下のことを思うと、少々暗くなる。兎に角、瓢箪池まで下って設営しよう。ガクガクになった脚を騙しながら、転倒せぬよう慎重に下って行く。

 コルには、平坦なサイトがあり、設営する。ドコモの電波も、なんとか届く。担いだ水と食料は豊富だし、明日は下るだけなので、ゆっくり夕食を摂る。

【8月13日】曇のち晴
 最終日の朝、撤収していたら、東稜を目指す二人パーティが現れた。少し会話した後、瓢箪池を撮影する。長七ノ頭を左にして、上宮川谷源頭部の草付斜面を下る。踏跡は右下方へ、上宮川谷の草付帯から岩々帯へと続いている。

 やがて上宮川谷を二分する岩稜が迫り、草付の中の踏跡は、岩根沿いを辿る。岩壁に、遭難慰霊のプレートも見られる。すれ違う登山者に、これまでのコースについて話すと、物好きぶりを呆れられた。一旦、樹林帯の浅窪地形を経て、開けた草付交じりのガレ斜面を下る。宮川尾根のコル付近では、踏跡が不明瞭になる。

 コルから下の踏跡は、ザレ窪に沿ってついているので、大きく迷うことは無いが、足元が崩れ易く不安定だ。時折、登って来る登山者とすれ違う。不安定だった道も、下るうちに次第に歩き易くなる。森の中に入ると、陽射しも遮られ、随分と楽になる。やがて養魚場裏の小川を木橋で渡り、最後の池として明神池に向かうことにする。

 車道に出ると、観光客が溢れていた。明神池では、あまりの人混みに、嫌になって引き返す。明神橋を渡り、明神館前で小休止後、上高地へ向かった。

:

GPS軌跡

アルバム

河童橋袂から岳沢方面
河童橋袂から
前穂明神主稜東面
横尾大橋前
一ノ俣橋
二ノ俣橋
ババ平先右岸の滝
大曲付近
天狗原分岐
トラバースから槍
天狗池
右俣カール俯瞰
右俣カールと北穂高
北穂池台地遠望
右俣カール底から
黄金ヶ原と屏風岩
黄金ヶ原
横尾谷二俣
横尾左俣
雪渓左岸に降りる
北穂池ノ滝
北穂池ノ滝
奥二俣の軍艦岩
奥二俣から振返る
北穂池ノ滝
左沢右岸取付尾根
北穂池の台地
一ノ池と常念岳
ルンゼ右岸逆L字
奥穂高岳モルゲンロート
涸沢岳モルゲンロート
東稜ゴジラの背
北穂高岳
前穂高北尾根
涸沢池
涸沢池
テント村と涸沢池
五六のコルから
五六のコルから奥又白池遠望
北尾根五峰
急斜面トラバース
奥又白谷
奥又白池
前穂高東面
奥又白池
茶臼のコルから先
下又白カール
瓢箪池
上宮川谷方面俯瞰
上宮川谷から瓢箪池方面を振り返る
宮川尾根コル方面
宮川尾根のコル
コルから明神を俯瞰
明神橋袂から来し方を振り返る

MR730_ 梓川横尾谷左俣・北穂池・奥又白池(北ア)'15-10

MR673_ 奥又白池からひょうたん池(北ア)'11-07

MR516_ 梓川横尾谷右俣下降・左俣・北穂池(北ア)'04-07

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