安達太良山〜西吾妻山スキー縦走(安達太良・吾妻)

MR67 安達太良山〜西吾妻山スキー縦走(安達太良・吾妻)

date 1981/4/1-4 
コース 奥岳温泉〜安達太良山〜鉄山〜箕輪山〜鬼面山〜土湯峠〜吾妻小屋〜吾妻小富士〜吾妻小屋〜東吾妻山〜酸ヶ平避難小屋〜一切経山〜酸ヶ平避難小屋〜家形山〜東大巓〜人形石〜西吾妻山〜人形石〜天元台スキー場
実働 第一日:6h05m、第二日:6h47m、第三日:5h30m、第四日:7h50m、計:26h12m
メンバー Yk君、すうじい
概要 安達太良山から西吾妻山まで大縦走、快晴強風の一切経山を越せず、停滞。
行程 →:ツボ足、:シール、**:アイゼン、:スキー
【4月1日】 晴のち小雪
二本松=奥岳温泉・岳スキー場5:15→5:55リフト終点6:05→6:20五葉松平6:30→7:10休7:30
→8:10安達太良山8:35→鉄山9:20→9:30鉄山避難小屋9:5510:15コル10:20→10:45箕輪山
11:05→→11:55コル12:05→12:35鬼面山12:50→13:15旧土湯峠13:30→13:55新土湯峠BP(泊)

【4月2日】 雨のち雪
 新土湯峠6:106:55休7:057:50休7:558:50城峰先9:00→10:05休10:1510:50→
11:00休11:1012:00鳥子平12:2513:10吾妻小屋14:05シーデポ14:20→14:25吾妻小冨士
14:28→シーデポ14:3015:00吾妻小屋(泊)

【4月3日】 快晴時々ガス、烈風
 吾妻小屋5:556:45休6:55**7:45分岐7:508:45東吾妻山9:009:30分岐9:40**10:10
酸ヶ平避難小屋10:30**一切経コル11:35**11:40バケツ11:55**12:05一切経山12:20**12:25
バケツ12:30**12:50休13:10**13:20酸ヶ平避難小屋(泊)

【4月4日】 高曇
 酸ヶ平避難小屋5:10**一切経コル5:40**6:10家形山1877P 6:306:50→7:00兵子下7:10
7:30ニセ烏帽子山7:408:00コル8:05**烏帽子山8:20**8:50→昭元山9:10→9:30コル9:50
10:30東大巓10:4011:00コル11:1011:55人形石12:2012:25コル12:30天狗岩12:50
13:05西吾妻山13:1513:30コル13:3513:50人形石14:10リフト終点14:3014:50
天元台リフト始点15:1515:45白布湯元=米沢
記録  私の山スキーの師匠であるYk君と、最初に出掛けたスキーツアーが、この安達太良・吾妻、そして続く蔵王であった。

【4月1日】 晴のち小雪
 例のごとく大慌てでパッキングをして、上野駅へ急ぐ。福島・磐梯ミニ周遊券は、七日間で学割4000円とお得。二本松で下車し、タクシーで、奥岳温泉の岳スキー場へ向かう。明け行く空は、快晴を物語る。

 ひとけの無い早朝のスキー場を、トボトボ登ると、ワン公が一匹ついてくる。この犬は結局、今日一日中、我々の縦走につき合うこととなる。林の中から、真っ赤な太陽が離陸する。ピステの傾斜は、次第に急になる。Ykは、その巨大なキスリングと板の重量に、難渋しているようだ。

 五葉松平まで登ると、うってかわって、快適な登りとなる。良く締まった雪面、ヒメコマツ?の疎林の通り抜け、眩しく反射する陽光、それら全てが、まさしく春山の雰囲気なのだ。「快適だなあ」の連発のうち、安達太良東面の春スキーヤーのシュプールや、鉄山の岩壁などを、時折見やりながら、高度を稼ぐ。このコース、下りの使ったほうが、良かったかなあ。稜線に出、苦しいダラダラ登りの後、やっとなだらかな山頂の一角に辿り着く。

 「果てたぁ」とザックをおろし、空身でピークを踏む。蔵王連峰が、輝きながら我々を招いている。吾妻連峰もバッチリ見え、その西側に、白銀の飯豊が眩しい。鉄山への稜線には、ほとんど雪が無く、強い陽射しは、春山と言うより夏山のそれである。矢筈森からの下りが、一部雪が凍結していて、イヤラシかったが、無事通過する。鉄山の登りは、岩々が露出していて、まるで夏山だ。

 鉄山避難小屋にて小休後、北西の雪斜面で、スキーを履く。重荷を背負った状態で、ガリガリバーンを滑るのは、かなり難しい。1655Pの北側の急斜面(30°を軽く越える)を斜滑降と横滑りでクリアするのは、すごくシンドかった。Ykは、重荷がウソのように、綺麗なパラレルで降りて行く。「ゲゲゲッ、助けちくり・・・!」とわめきながら、滑るすうじいは必死である。

 箕輪山は、正直に夏道を登る。三角点は雪に埋もれて、不明だった。北面の疎林帯を、パラレルもどきで下る。二人とも、何度も転倒するも、Ykの「すうじいさん、うまいよ!」のオダテに乗せられて、すうじいも果敢に滑った。鬼面山も、正直に夏道通しに越える。旧土湯峠に至る頃になると、小雪がちらつき始め、ワン公も、食いバテしたか、元気が無い。

 新土湯峠の展望台の下に、風避けが付いているのを利用して、ツェルトを被って寝る。

【4月2日】 雨のち雪
 昨夜は風が強かったとYkは言うが、すうじいは全く気付かなかった。除雪された道路を通って、どこか温泉にでも下ったのだろう、ワン公の姿が見えない。

 雨の中、シールを着けて出発する。下りでのテレマーク姿勢を、Ykに教わるが、なかなか難しい。まだ除雪されていない、吾妻スカイラインに沿って登る。途中二ヶ所、スキーを担いで、急登によるヘアピンカーブのショ−トカットを断行。これは、苦しかった。

 鳥子平付近になると、小雪の中の林間コースといった風情で、「林道歩き」的な辛さから、ようやく「スキーツアー」らしい楽しさへと変わる。ここまでの6ピッチは消耗だったが、吾妻小屋への残り1ピッチは快適だ。

 吾妻小屋に到着し、その中を見て驚く。あまりに立派なのだ。夏期は営業小屋で、冬期開放となっている。二重窓だし、毛布、マットレスはあるし、石炭ストーブまであるではないか(尤も、このストーブは、煙突が詰まっていて、使用不能であったが)。

 訳の解らぬ変な天気ではあるが、とりあえず、吾妻小富士だけは、やっつけておこうと決める。空身で、シールを履く。雪の限界までシールで登り、シーデポする。強風の中を、火口縁まで登ると、立っておれない程の強風で、岩にへばり着いて動けない。火口一周は不可能と見て、悔しいが、1704.8三角点を踏まずに引き返す。空は、快晴もどきで、一部怪しい雲が湧き、猛烈な風が吹く。シーデポから、シールで小屋へ戻る。

 快適この上ない吾妻小屋での一夜は、毛布をふんだんに利用させて貰った。夜中、外は吹雪であった。

【4月3日】 快晴時々ガス、烈風
 朝、若干寝坊する。外は明るい。やった!晴れてる。

 シールを着けて、いざ出発。すごい風で、ザックが持って行かれそうだ。浄土平から、蓬莱山の南側を、姥ヶ原に向けて登るが、雪面がアイスバーン化していて、シールが効かなくなり、1ピッチでアイゼンに履き替える。ザックに着けた板が、風をモロに受けて、身体が大きく左右に振られる。ヨロヨロと進んで、1ピッチ。

 ブッシュの間に、ザックをデポし、空身でシールを着け、東吾妻山をサブする。登りにくい樹林の斜面を、ヒイコラ登って、1ピッチ。東吾妻山山頂は、石ころ混じりのアイスバーンで、強風の中、立っていられない。中吾妻・西吾妻・吾妻小冨士が美しい。シールを外して、滑降に移る。複雑な雪質を、樹林を縫って滑るのは、大変難しい。ザックデポまで、ガリガリと滑降する。デポ地点に戻り、アイゼンで、鎌沼東岸付近を通って、酸ヶ平避難小屋へ向かう。相変わらず、ザックに着けた板が振られる。

 避難小屋で休憩後、沢を詰めて、窪地の西側をトラバりながら、一切経山のコル(1928Pと1948.8Pとのコル)に近付いて行く。風は、コルに近付くに連れ、その激烈さを増し、トラバり気味に、コルの20m手前から10m手前まで、腹這いになって移動するのに、20分程かかった。この時ほど、ピッケルのピックが有り難いと感じたことは無い。風は全く切れ目無く、ビュービューと吹き続ける。コルの通過は断念して、10mほど、沢に沿って下り、バケツを掘ってスキー板・荷物を置く。

 空身での一切経山ハントへ、方針を転換する。アイゼン・ピッケルで、沢をトラバって、一切経山の南面を登るってみると、山頂付近には、雪が全く着いておらず、巨大なケルンが見える。普通には立っておれない烈風の中、巨大ケルン目指し、全体重を風上にかけ、満身の力を振り絞って前進する。息もできない、眼もろくに開けられない、激風なのだ。やっとこさ、ケルンの根元に身を寄せて、Ykと握手をし、ふと見上げると、そこには、「空気大感謝塔」という文字の書かれた、白い塔が立っていた。その意味が、なんだか、とても判る気がした。もしこの巨大ケルンが無かったならば、我々はこの山頂には、留まっておれないだろう。

 空は、相変わらず、ド快晴で、飯豊や吾妻連峰、蔵王がくっきり見えるのに、なのに我々は、この山を越せないのだ。「信じられない!何なんだ、この風は?」。今日のこの風に比べたら、昨日の吾妻小冨士火口縁での風など、子供騙しみたいなもんだ。帰りは、慎重にかつ脱兎の如く、デポバケツに戻る。

 バケツで再び板付のザックを背負い、ヨロヨロと沢の右岸を下って、窪地を通り、避難小屋の沢の上まで来てタルむ。空は紺碧、雲一つ無く、四囲の山々が眩しいほどくっきりと目に入る。なのに・・・「こんな快晴の日に、敗退するなんて・・・、風って凄いなあ」。一切経山は、普段でも強風で有名な所らしい。今日は、低気圧が通過した後で、「吹き出し」になっているから、余計に風が強いんだろうな・・・と考えながら、酸ヶ平避難小屋へ帰り着く。今宵は、ここをねぐらとする。

 Ykの描いた天気図を見ると、何と昨日の三ツ玉低気圧が合体し、960mbほどの巨大低気圧に発達して、千島付近に君臨しているではないか! これでは、強烈な西風が吹くはずだ、と二人納得。それにしても、ここ数日の高気圧・低気圧の移動は、えらく速い。避難小屋の扉が壊れており、雪が吹き込んでいる。ストックで扉を押さえる。昨日の快適な吾妻小屋と比べると、雲泥の差だが、文句は言えない。寒さに備えて、早めに寝る。

【4月4日】 高曇
 昨夜は、夜通し風音がうるさく、気になって良く寝付けなかった。3:00に起きて、外を見ると、高曇りで、風も少し穏やかになっていて、町の灯りも見える。

 アイゼンを装着し、小屋を出て、沢を登って左手の山をトラバース気味に登り、30分ほどで、一切経のコルに至る。昨日の苦闘がウソのようだ。ここから、一切経山の西面をトラバースし、五色沼の西側を通って、家形山に取り付く。家形山山頂で、アイゼンを外し、ここからいよいよ、シールを主とした縦走が始まる。

 家形山から兵子への下りが、地形的に難しい。兵子のピークはパスして、ニセ烏帽子山へ向かう。ニセ烏帽子山から下ろうとしたところで、山形大山岳部の二人パーティと出会う。昨夜は、昭元山で雪洞ビバークしたそうだ。烏帽子山は、アイゼンで登降する。昭元山に取り付くと、雪が腐り、団子ができて、重く歩きにくいため、アイゼンを外す。ここの登りが、今日一番辛いところである。昭元山からコルまで下って、シールを着ける。

 コルから東大巓まで、最高に効率の良いトラバースをやりながら、疎な針葉樹林を直進して行く。春スキーそのものといった、快適さを満喫する。東大巓の山頂で、すうじいのカメラのシャッター(ミラー?)が上がらなくなり、大いに焦る。ここから、本日初のスキー滑降だ。バーン化した斜面は、最高に快い。

 藤十郎とのコルで、山スキーヤー二人パーティと逢う。シールを着けていたら、さらにもう一人、スキーヤーが来る。天元台スキー場の音楽が聴こえる程の所だから、人が多いのも仕方ない。それに、今日は土曜であった。汗をかきかき、1ピッチで、人形石に辿り着くと、ドワッとスキーヤーがたむろしている。どっと疲れが出てしまう。しかし、よくぞここまで来たものだ。振り返れば、一切経から来し方の山々が、連なって見える。

 まだ正午である。人形石にザックデポし、西吾妻山をハントして、今日中に下山しよう。空身で、コルまで斜滑降する。シールを着け、ひたすらペタペタ登る。樹林の間の、凹凸起伏の大きな雪を踏んで、天狗岩経由で、やっと最後のピーク:西吾妻山山頂に至る。Ykとがっちり握手して、ゴクロウサンでした。エビノシッポをかじりながら、吾妻の山々・安達太良・磐梯を見やる。

 さて、戻ろうか。シールを外して、スキー滑降だ。樹林帯の難しい下りの後、凡天岩をトラバースする。そこから、中大巓とのコルまでの下りは、快適なバーンである。コルでシールを着け、人形石まで登り返せば、あとは天元台スキー場への、最後の大滑降が待っている。

 ザックを背負って、下り始める。すうじいにとって、重荷を背負っての、樹林帯の深雪急斜面滑降は、恐怖そのものだった。転倒すれば、消耗で悲惨な結果が待っている。斜滑降と横滑り、キックターンを多用して、慎重に下るすうじい。ところで、Ykはどうしてるかな、と見やれば、何とこの期に及んで、パラレルで下ろうと、悪戦苦闘しているではないか!。凄いガッツである。転んでも、転んでも、Ykはその攻撃的滑りを、止めようとはしない。

 シビアな樹林下り20分間の後、ピステに飛び出した。我々二人は、快哉を叫びつつ、伸び伸びと華麗に(本人達がそう思っているだけ)滑降してゆく。巨大なザックを背負った、異様な山男二人が、パラレルで「ガルル〜ッ」と滑って行く姿は、確かにピステの注目を集めていたようだ。しかし、山靴で滑降するのは、大腿の筋肉にものすごく負担がかかるので、大腿に熱を感じてくる。20分で、ピステも滑り終え、ビールを飲んだ。

 ロープウェイに乗らずに、白布湯元へ滑降できると聞き、スキーで下ることにする。狭い林道のコースを下って行くうち、先程飲んだビールが回ってくる。反応が鈍くなって、ターンが上手く出来ない。さっさと下るYkの後を、モタモタ、イモイモ追いかけるすうじいであった。30分もかかって、やっとバス停に辿り着く。

 米沢の街で、小学生が、じっとYkの顔を見つめ、「黒いな」と一言。大笑いする。今宵は、山形駅で駅カンする。

スキーツアー概念図

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その1:安達太良山
その2:吾妻連峰

MR68_ '81東北スキーツアーシリーズU:蔵王スキーツアー(蔵王)'81-04

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