薬師岳・黒部五郎岳・鷲羽岳・笠ヶ岳・槍ヶ岳・大天井岳・常念岳・徳本峠(北ア)

MR175 薬師岳・黒部五郎岳・鷲羽岳・笠ヶ岳・槍ヶ岳・大天井岳・常念岳・徳本峠(北ア)

date 1983/8/1-8
コース 有峰口=折立〜太郎平〜薬師岳〜北ノ俣岳〜黒部五郎岳〜三俣山荘〜鷲羽岳〜祖父岳〜三俣山荘〜三俣蓮華岳〜双六岳〜双六小屋〜笠ヶ岳〜双六小屋〜槍ヶ岳〜大天井岳〜常念岳〜蝶ヶ岳〜大滝山〜徳本峠〜上高地=松本駅
実働 第1日4h20m、第2日9h40m、第3日2h20m+α、第4日8h35m、第5日4h30m、第6日9h25m、第7日6h05m、第8日6h45m、計51h40m+α。(α:三俣山荘基点鷲羽岳〜祖父岳周遊)
メンバー すうじい、A君、(Wdさん、Wtさん:笠ヶ岳から新穂高温泉へ下山)
概要 夏の北アルプス大縦走、快晴展望、お花畑。
行程 【8月1日】 雨
有峰口=折立8:00→12:20薬師峠(幕営)

【8月2日】 晴
薬師峠4:25→薬師平4:45→薬師岳山荘5:25→6:00薬師岳6:30→7:40薬師峠8:45→9:40休9:50→10:45 2576P手前10:55→北ノ俣岳11:17→11:45赤木岳先11:55→12:502500P付近13:00→13:50 2555P先14:10→14:55分岐15:00→15:20黒部五郎岳15:30→分岐15:40→16:00天気図16:35→17:30黒部五郎小舎(幕営)

【8月3日】 曇時々晴
黒部五郎小舎7:40→8:40休8:50→9:50休10:00→10:20三俣山荘→鷲羽岳→岩苔乗越→祖父岳→三俣山荘(幕営)

【8月4日】 快晴
三俣山荘5:50→6:50三俣蓮華岳7:00→8:10双六岳8:20→9:00双六池9:10→10:10雪渓10:20→11:10休11:20→12:30秩父平13:00→13:55休14:05→14:55 2737P付近15:05→15:35笠ヶ岳山荘→15m→笠ヶ岳→15m→笠ヶ岳山荘(幕営)

【8月5日】 快晴時々曇
笠ヶ岳山荘→15m→笠ヶ岳→15m→笠ヶ岳山荘7:55→8:35笠新道分岐9:00→抜戸岳9:10→9:45秩父平10:00→12:35双六小屋(幕営)

【8月6日】 快晴のち俄雨のち曇
双六小屋3:45→樅沢岳4:20→6:25千丈沢乗越6:35→7:30槍岳山荘→槍ヶ岳→槍岳山荘8:15→水俣乗越9:50→ヒュッテ西岳10:50→13:20大天荘(幕営)

【8月7日】 快晴
大天荘5:15→大天井岳5:30→大天荘5:40→常念小屋7:20→8:30常念岳9:05→10:55 2462コル11:10→蝶ヶ岳→12:10蝶ヶ岳ヒュッテ(幕営)

【8月8日】 快晴
蝶ヶ岳ヒュッテ5:40→6:40大滝山6:55→大滝槍見台→徳本峠10:35→明神12:00→12:40上高地12:50=14:20松本
記録 夏の北アルプス大縦走。A君とWtさんの記録を基に、山行記録の形にしてみました。

【8月1日】 雨
 土砂降りの中、出発する。登山道は、殆ど川と化している。朝食のオニギリが、手の中で、お茶漬け状態だ。ゆっくりなペースで歩いていたが、いつの間にか、単独行のオジサンと我々以外には、人影が見えなくなる。立ち止まる気になれず、ダラダラと平坦な尾根を、休まずに歩いて行く。前日に出発した二名のテントが、薬師峠で待っていると思うと、鬱陶しい雨も、少しは我慢できる。

 薬師峠のテント場で、仲間のテントを見つけて、ホッとしたことは言うまでもない。午後は、テントの中で停滞を決め込む。

【8月2日】 晴
 3:30に起きてみると、満天の星空。空身で、薬師岳のハントに出掛ける。薬師平まで登ると、槍、黒部五郎、雲ノ平、雲海に浮かぶ白山、乗鞍、御嶽など、どの山も光り輝いているようだ。昨日の雨が、まるでウソのようだ。ハクサンイチゲ、シナノキンバイ、イワカガミ、ハクサンフウロなど、朝露に濡れて咲いている。

 薬師岳山頂からは、槍・穂高、剱・立山、白馬・五竜・鹿島槍など、展望は欲しいままである。早朝の爽快さと相まって、最高の気分である。30分ほど山頂で過ごし、テン場へ戻る。

 撤収して、縦走を開始する。足元のミヤマリンドウに目をやりながら、薬師岳の重量感あるマッスを振り返りながら、足を進める。太郎山を越えて、なだらかな道を行くと、右手には、雲海に浮かぶ白山、左手には、薬師岳そして水晶岳が見える。眼下には、青空を映す池塘が点在している。牧歌的で、長閑な風景だ。

 ハクサンイチゲのお花畑に、薬師岳の姿がよく似合う。赤牛岳・水晶岳・鷲羽岳も姿を見せる。次第に景色が変わり、前方に笠ヶ岳の頭が見えてくると、縦走している実感が、いよいよ湧いてくる。黒部五郎岳に取り付くまでが、長く暑い道のりだった。2555Pを過ぎたところで、黒部五郎の急な登りに備えて、休憩する。

 大きな荷を背負った高校生パーティが、大声を張り上げながら登って行く。我々もその後に続き、一歩一歩、ゆっくりと登る。キツイ登りも約一時間で、カールへ下る道の分岐に至る。ザックデポして、黒部五郎岳山頂へ。雲の合間から、槍ヶ岳が顔を出し、聳え立っている。振り返れば、薬師岳と、そこから続く縦走路が見える。

 分岐のデポに戻り、黒部五郎カールへの道を下る。カールバントを下りきった辺りで、天気図を取る。その後、意外と長いトラバースの道を辿って、黒部五郎小舎へと至る。テン場からも笠ヶ岳が見える。西側の夕暮れ空は、美しかった。

【8月3日】 曇時々晴
 前日がハードだったので、今日はゆっくりの出発だ。三俣蓮華岳には登らず、北西面トラバースの道を通って、三俣山荘のテント場へ向かう。途中、お花畑のシナノキンバイが美しい。テント場からは、鷲羽岳が間近に見え、雲ノ平への道も見える。

 今日のサイトはこのテント場なので、荷は置いて、二手に分かれての半日行動だ。A君、Wdさん、Wtさんの三人は、雲ノ平へ出掛ける。すうじいは、ひとり鷲羽岳・祖父岳を目指すことにする。

 鷲羽岳へ続く、ザレた道を登る。右下に、鷲羽池が見下ろせる。あいにく、山頂近くはガスの中であった。さらに、ワリモ岳を越え、岩苔乗越へ下る。ここから祖父岳へ向かう。赤岳・水晶岳・赤牛岳の稜線、ワリモ岳・鷲羽岳の稜線にかかる雲が、なかなか晴れてくれない。

 祖父岳山頂には、平たいザレ地の上に、ケルンが積んであった。日本庭園と呼ばれる所を通って、黒部源流を渡る。この辺りは、トリカブト・ハクサンフウロ・クルマユリ等のお花畑になっている。三俣山荘まで登り返して、半日ハイキングを終える。

 夕暮れの槍と北鎌尾根・硫黄尾根が印象的だった。

【8月4日】 快晴
 快晴の下、約一時間の登りで、三俣蓮華岳に至る。薬師岳、黒部五郎岳、槍・穂高、これから向かう笠ヶ岳、全て見えている。朝の爽やかな風を感じつつ、槍穂を見ながらの稜線漫歩で、双六岳へ向かう。双六岳から双六池への下り道、砂浴びしている雷鳥の親子に出くわした。

 双六池から見る笠ヶ岳は、ちょっといい感じだ。思わずカメラを構えたくなる構図だ。双六池から稜線西側をトラバースする道は、通行止になっており、稜線経由の道を行く。炎天下の縦走路を、ひたすら歩く。途中、雪田のあるところで、これ幸いに休憩する。弓折岳を巻き、大ノマ乗越まで急坂を下る。大ノマ岳2662Pまで大登りして、秩父平へと下る。

 秩父平は、冷たい流水が得られ、一面のお花畑で、まさに楽園である。むろん、大休止となる。お花畑を抜け、2792Pを過ぎると、ほぼ平坦な道となり、日も隠れてくれたので、かなり楽になる。抜戸岳をトラバースし、奇怪な抜戸岩を通り抜けると、笠ヶ岳のテント場は、そう遠くはなかった。

 その端正で優美な姿を、ずっと見せてきた笠ヶ岳は、いざ近くで見ると、ガレガレの山だった。設営し、夕食を終えた後、空身で笠ヶ岳に登る。夕照の槍ヶ岳を始め、夕日に照らされる辺りの山々を、眺め続ける我々であった。星が見え始める頃になって、サイトに戻った。

【8月5日】 快晴時々曇
 4時に起きて、日の出を見に、再び笠ヶ岳山頂へ。槍の左から、太陽が昇る。今日もまた快晴だ。

 笠新道の分岐で、本日新穂高へ下るWd、Wtの両名と別れ、昨日の縦走路を戻る。人数が減ると、やはり寂しい。秩父平のお花畑で休憩後、鏡平散策という案は放棄して、テント場確保のため、一路双六小屋へと向かう。

 双六小屋のテント場は、色とりどりのテントが乱れ咲き、80張以上あった。

【8月6日】 快晴のち俄雨のち曇
 星空の下、急な坂道を、黙々と登る。樅沢岳を越えると、朝靄の中に、槍ヶ岳が聳え立つ。

 西鎌尾根を辿り、硫黄乗越から千丈沢乗越を過ぎると、いよいよ急登が始まる。ゆっくりゆっくりと、槍ヶ岳へ近付いて行く。登り行くに連れ、槍の形は歪になり、二つの黒い岩峰が聳える様は、不気味なほどの迫力だ。

 予定通り、8時までに槍岳山荘に到達する。頭上を、ヘリコプターが飛んで行く。観光ヘリだろうか。人混みに揉まれながら、今山行唯一の3000m峰のピークを踏んだ。

 東鎌尾根の下りは、鉄梯子、鎖場などの緊張もさることながら、往来の激しさに閉口した。登山者は、親子連れや、年配者の集団が多く、待ち時間の疲れること!

 水俣乗越から西岳への登りは、一時間で一気に行く。しかし、次のピッチから、暑さと渇きで疲労が増幅する。水筒が空になる。大天井ヒュッテで、ジュースを飲みたかったが、グッと我慢して、大天荘へのトラバースへ向かう。天の助けか、日が陰り、テント場に近付くと、疲れ切った我々を慰めるように、コマクサが咲いていた。

 牛乳を飲み、テントを張ると、夕立が来た。雨上がりの空に、槍の姿が浮かぶ。ひたすら歩き続けた今日は、こんな風に景色を眺めるのは、初めてだったな。

【8月7日】 快晴
 朝、大天井岳をピストンして、常念岳へ向かう。道はなだらかで、空は晴れ、展望バッチリで、もうルンルン気分だ。常念岳への登りは、昨日の疲れのせいか、思いの外ペースが上がらない。

 常念岳山頂で、槍の穂先が見えるまで粘って、カメラに収める。槍穂高連峰の眺めが、もう最高である。

 蝶ヶ岳への登りに入ると、湿っぽい樹林とお花畑になる。蝶ヶ岳の山頂に到達すると、林間学校なのか、登山者の平均年齢が、グッと下がった感じがする。頂上で昼食を拡げる家族連れを見ていると、丹沢かどこかのようである。風船割りをするパーティ、歌を歌うパーティ・・・。天応に恵まれた今山行の中でも、この明るさは、いったい何なのだろう。

 今日は、蝶ヶ岳のテント場泊まりなので、のんびりである。

【8月8日】 快晴
 素晴らしい朝だった。雲一つ無い空に、槍穂高の大パノラマと、北に常念岳、南遙かには、八ヶ岳、南ア、富士山が見える。ひっそりとしたお花畑を歩き、大滝山へ向かう。大滝山荘付近の寂れた感じは、これまでに無かった雰囲気だ。

 大滝山を下ると、樹林の中のトラバースになる。木々の隙間に見え隠れする穂高も面白い。大滝槍見台とは、名ばかりで、高木に阻まれて、槍は見えない。槍見台での休憩が無くなったお陰で、2246Pまで、ロングピッチになってしまった。この付近は、地形が複雑で、現在位置が判らないことも重なって、いい加減ウンザリした。しかし、久々に味わう静寂だった。大滝山から徳本峠までの間、ついに誰とも会わなかった。

 短パン・Tシャツに着替えて、明神への下り道を急ぐ。長かった大縦走も、観光客で溢れる上高地で終点となる。タクシーに相乗りし、目が覚めると松本だった。この日、地震で電車が遅れたりした。

アルバム

T:黒部五郎岳〜鷲羽岳〜双六池

U:笠ヶ岳〜大天井岳〜徳本峠

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