阿武隈川一里滝沢左俣・南沢右俣(那須)

MR172 阿武隈川一里滝沢左俣・南沢右俣(那須)

date 1983/06/18-19 曇のち雨、雨のち晴 
コース 新甲子温泉〜甲子温泉〜南沢出合〜一里滝沢左俣〜須立山北コル〜須立山〜坊主沼〜甲子山
〜甲子温泉〜南沢出合〜南沢右俣右沢〜甲子山〜甲子温泉〜新甲子温泉
実働 第一日:7h10m、第二日:4h30m、計:11h40m。
メンバー すうじい(単独)
概要 大量発生のヤスデを掻き分けての溯行、藪漕ぎなし、南沢は直登可能の滝多し。
行程 =:バス・鉄道、→:山道、:溯行、\\:藪漕ぎまたは詰め
【6月17日】 
上野18:42=21:45黒磯21:54=22:28白河(駅寝)

【6月18日】 曇のち雨
白河6:27=新甲子温泉7:10→甲子温泉8:00→8:25南沢出合8:30右俣出合9:06中俣出合9:239:40休9:55大滝下10:451510M枝沢11:3011:40休11:50\\須立山北コル12:08→12:25須立山12:35→13:15坊主沼避難小屋14:00→甲子山14:40→15:30甲子温泉15:40→15:55南沢出合BP(泊)

【6月19日】 雨のち晴
南沢出合BP 5:20二俣7:258:00大滝上8:10奥ノ二俣8:20\\9:00甲子山9:05→甲子温泉9:45→10:05=10:10新甲子温泉10:30=11:15白河12:24=12:58黒磯13:17=16:07上野
記録  夏の沢登りシーズンが到来し、丹沢・奥秩父中心から、南会津・上越方面へと目が移る。南会津東端の那須山域で、まず目に付くのが、阿武隈川源流域である。高い交通費を払って行くのだから、2本は溯りたい。本谷は長すぎるし、白水沢は今一つ・・・という訳で、一里滝沢と南沢を狙うことにした。両沢とも、藪漕ぎらしい藪漕ぎもなく、割と短時間で抜けることが出来た。南沢は10m級の滝が多く、直登できて、楽しい溯行であった。

【6月17日】
 黒磯行の普通列車は、思ったよりも空いている。もっとも、発車時には満員だ。黒磯で白河行の列車に乗り換えると、ガラガラとなった。白河駅の待合室で駅寝する。掃除のオジサンに、お茶をご馳走になる。

【6月18日】 曇のち雨
 新甲子温泉行の始発バスには、乗客が私ともう一人。その人が話しかけてくる。「どこの沢登るの?」やたら詳しいので、ん?と思っていると、釣の会「阿武隈研究会」の会長さんだそうで、白河の山岳会にも所属しているそうだ。昨日、釣の会で、阿武隈川源流の本谷、一里滝沢、南沢、白水沢に、岩魚の稚魚3000尾を放流したそうだ。

 新甲子温泉から、新緑に包まれた阿武隈川右岸の車道を、50分歩くと、甲子温泉大黒屋だ。左手の藪っぽい林道を進み、15分ほど登り気味に行って、小尾根上の踏跡を下れば、南沢出合の川原に出る。先程の会長さんが待っている。一里滝沢に放流した稚魚を見に行くそうなので、行動を共にする。

 南沢出合は、広葉樹の若い疎林となっていて、あまり明瞭ではない。僅か40-50m先が、もう一里滝沢出合である。すぐに10m滝があって、右を登る。小滝が連続し、やがて川原状になる。左岸から右俣が5m滝で落ち合い、本流は4m滝となる。水量比は、(3:2)。

 再び川原状となり、捻れた滑滝や滑床を過ぎると、(3:2)の二俣となる。右の中俣(仮称)の方は滑床で、川床が低く、左の左俣は5mスダレ滝で落ち合う。本流である左俣に入る。

 滑を過ぎて、またゴーロになる。ちょっとした釜など、目を凝らして覗き込むと、体長5cmほどの岩魚の稚魚がいる。このあたりで、会長さんは帰ると言うので、別れる。小休後、少し行くと滑床となり、大量の土砂で埋まったスラブ状の奥に、3m分ほどの滑滝があり、花崗岩の床に、直径2mほどのカメ状の釜がえぐれており、2x5mトヨナメが注いでいる。

 その上に、2段6m滑滝がある。この辺りは、両岸草付スラブ状で、いよいよ核心部である。次の6m滝は、水流左の細かいホールドを拾って直登するが、最後が悪い。大量発生したヤスデが、使えそうなホールドを全て占領していて、気味悪く、いちいち払い落として登る。

 次の7m滝は登れそうもないので、右岸の急な草付を登り、バンド状を落口へ向かってトラバースし、草木の根をホールドにして斜上し、滝上に降りる。やや悪い。正面に大滝25mが、下半分の水流を空中に飛ばし、右岸からは涸れルンゼが入る。左岸のルンゼ状草付を登り、ブッシュを頼りに小尾根を越えて下ると、さらに25m滑滝が水流を走らせている。笹を利用して、これも一緒に巻いてしまう。

 沢に降りると、滑床が続く。右岸の涸れルンゼの基部に、雪塊が残る。幅10mくらいか。8m階段状滝を二つ越え、小滝を越すと、正面に端正な須立山が姿を見せる。所々にブロックが残る沢筋を、忠実に辿る。右岸から、須立山よりの枝沢が、(1:5)で出合う。左上から右下に流れる4mトヨ状滝を越えると、水量がぐっと減る。

 水をポリタンに詰めた後、沢床の低い方を忠実に選びつつ、ひたすら詰めて行くと、笹に覆われた窪状になる。最後に、10mほどの笹のバリケードを突破すれば、須立山北コルの縦走路へ飛び出した。

 新緑の山に、聞こえるのは鳥の声。そのまま須立山へと、ガレた道を登る。食いバテか、極端に脚が重い。振り返り振り返り、気分転換しつつ登る。次第にガスが湧いてきて、須立山山頂では、全く展望がない。

 小休後、坊主沼へと北上する。アズマツリガネツツジと思しき花が、沢山咲いている。坊主沼では、ガマガエルの大合唱。避難小屋で、お茶を沸かして大タルミする。小屋を出る頃、雨が降り出す。甲子山を越え、四十八曲りの山道を下って、甲子温泉の大黒屋に出る。

 再び、朝通った林道を利用して、南沢出合に下降する。天気図を描いた後、出合の疎林にツェルトを張り、小雨の中で焚火をする。炊事は全て、焚火を利用できた。林の中ゆえ、ツェルトに落下する滴のボタボタには閉口したが、快適なサイトである。一晩中、降ったり止んだりしていた。

【6月19日】 雨のち晴
 残念ながら雨だ。とりあえず、朝食のウドンをつくって食べる。雨の中の撤収は、イヤなものだ。雨具上下を着て出発。

 南沢に入って、少しゴーロを行くと、下部がナメ状の10m滝がある。右壁を登るが、ホールドが外傾していてイヤラシく、朝一番のこともあって、慎重に登る。次の2段12m滝は、上部のバンドを目指して、右を登る。傾斜がややきつく、途中に効いていない残置ハーケンがある。うーむ、この沢の滝は手強いぞ。上段はナメになっている。

 5mCS滝を越えると、右岸から枝沢が落ち合う。正面は4x6m滑滝で、その上には15m滝が続く。右壁を登るが、ホールドは泥と腐葉で埋まり、ヤスデのオンパレードである。これらを掻きのけて、ゆっくり登って行く。小滝の上の10m滝も、やはり右を登る。上部は岩が脆く、残置ハーケンがあり、そこから水流へとトラバースして、細かいホールドを利用して登る。やや悪い。

 入口が滑床のゴルジュに入り、少し行くと、左岸にスラブ壁が広がり、7m滝となる。右岸のスラブ壁を、細かいホールドを利用してトラバースし、水流に近付いて越す。次の15m滝は、右を登るが、下部は傾斜が緩く、上部もホールドがしっかりある。

 これを越すと、(1:2)の二俣で、右俣に入ってゴーロを行くと、右岸から枝沢が出合い、ゴルジュとなる。左岸に大岩壁のある所で、沢は左に折れ、2段6x8m滝。その上の5m滝は左を登る。


 再び右岸から、(1:5)の枝沢が出合い、本流のゴルジュの3段8mトヨの奥には、思わず「おおっ!」と唸らせる30m大滝が姿を現し、豪快に水流を空中に飛ばしている。基底部のナメ状が5m、空中を飛んでいる部分が15-20m、上部が10mくらいであろうか。左を登るのであるが、まず左壁の末端から、傾斜の緩いところを登り、悪い草付を直上し、次に水流側へトラバースして、高度感溢れるリッジ登攀となる。草付とトラバースがやや悪い他は、特に問題ない。リッジは、ホールドがしっかりしている。

 大滝を過ぎると川原状となり、いつの間にか陽が射している。暑いので雨具を脱ぎ、タルむ。あとはツメの処理だ。新甲子温泉10時半のバスに乗るには、9時頃に甲子山に着けば良いのだが・・・。

 5m滝、ナメ2つと越えると、(3:1)の奥ノ二俣だ。中央に赤土のガレが広がる。「阿武隈研」の会長さんの助言に従い、右沢に入る。入口が藪っぽいので、少々ビビったが、彼の「藪漕ぎなし」という言葉を思い出し、進んで行く。少し行くと、10m涸棚。梅雨期なので、濡れてはいるし、例のヤスデはいるし、だが階段状であることが救いだ。これを越えると、ナメが連続する。次第に傾斜がきつくなってゆくので、バランスとフリクションが重要だ。ナメに飽きた頃、傾斜がきつすぎるので、左岸のブッシュに入る。

 沢に戻って、最後の脆い涸棚を、木をホールドにして越えると、風化したスラブが広がる。スラブの左端を、ブッシュを利用しつつ登る。スラブが終わる頃、ブッシュ帯に突っ込み、20m弱の藪漕ぎで、甲子山頂に出る。丁度9時だ。急ぎ下って、甲子温泉大黒屋まで40分。そのまま、新甲子温泉へと歩く。途中で、大黒屋のマイクロバスに拾われる。

 新甲子温泉の甲子高原ホテル前で、バス待ちをしていて、ふと気が付くと、あたりの新緑の林で、ヒグラシの鳴き声が満ちていた。雨とヤスデに見舞われた山行だったが、充実感が残る。心地よい疲労と空腹とが、五体に広がっていった。

溯行図

MR244_ 阿武隈川白水沢左俣・阿武隈川本谷'85-09

MR327_ 阿武隈川白水沢大白森沢'95-06

MR546_ 阿武隈川源流の滝巡り'05-07

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