'82東北スキーツアーシリーズV:八幡平〜山毛森スキーツアー(八幡平)

MR123 八幡平〜山毛森スキーツアー(八幡平)

date 1982/3/5-6 
コース 八幡平スキー場〜大黒森・恵比須森コル〜茶臼岳トラバース〜黒谷地湿原〜源太森〜陵雲荘〜八幡平頂上〜アスピーデライン〜山毛森〜大沼温泉〜トロコ温泉〜志張温泉
実働 第一日:5h55m、第二日:1h30m、計:7h25m
メンバー すうじい(単独)
概要 風雪・深雪の八幡平横断、モンスターの群れの中をスキーラッセル、ビショ濡れビバーク。
行程 →:ツボ足、:シール、**:アイゼン、:スキー
【3月5日】 曇のち風雪のち雨
八幡平観光ホテル8:00→8:10第二リフト乗り場8:45=第三リフト乗り場9:20稜線[50番]10:1510:50茶臼トラバース合流点[151番]11:00黒谷地湿原[194番]11:1011:30休11:4012:20陵雲荘12:5513:25休13:3514:50アスピーデライン15:1016:10 1150コル16:1516:35八幡平無線中継所[山毛森](BP)

【3月6日】 晴
山毛森7:157:35大沼温泉7:458:13トロコドライブイン8:18→8:288:35→8:45休9:15→9:30志張温泉
記録 【3月5日】 曇のち風雪のち雨

 早朝、急行で盛岡駅から大更駅に移動し、すぐにバスに接続。仙台のパーティも乗り込む。八幡平観光ホテルから、八幡平スキー場の第二リフト乗り場まで歩き、リフトに乗る。第三リフトは、なかなか動く気配が無い。

 第三リフトは動きそうもないので、リフト券200円分を無駄にして、シールで登り始める。年配の二人、仙台の五人パーティ、すうじいの順で、トラバース気味に、恵比須森へ直接向かう。稜線で仙台パーティを抜き、先行の二人のトレースを追う。軽装の二人は、地元の人らしく、全く追い付けない。

 茶臼岳近くで、トレースは稜線を離れ、赤布に従って、右手へトラバースしている。稜線を忠実に辿るか、赤布・トレースを辿るか、迷うが、赤布を追うことにする。再び縦走路と思しき広い切り開き状に出た所[151番のプレート]で、「ここは、どこかいな?」と考えていると、左手から仙台パーティの声がして、やがて合流する。彼らは、茶臼山荘を経由して来たのだ。

 視界が20m程しかきかないので、山スキーのベテラン:仙台のリーダーの、後について行く。黒谷地湿原[194番]から先は、プレートが完備しているが、ラッセルが深い。二人パーティのトレースは、無いようだ。ここからは、しばらく、すうじいが先行してラッセルする。スキーを履いて、膝近くまでのラッセルで、なかなか苦しい。

 源太森付近では、頼みのプレートも、みなモンスターの外套に覆われ、風雪ますます強く、視界10mそこそこである。仙台パーティのリーダーが、トップのルートミスを鋭く指摘して、「こっちだ!」と、正しい方向へ誘導する。たいしたものだ。すうじい一人では、まず間違いなく、行動できない状況である。

 やがて、白一色の視野に、竹竿が次々と現れ、我々を陵雲荘へと導いてくれた。仙台のパーティと共に、陵雲荘内へ入り、昼食を摂る。テルモスのミルクコーヒーが美味い。

 ここで、裏岩手縦走の仙台パーティに手を振って別れ、すうじい一人で出発。八幡平山頂を経由して、山毛森へと向かう。20-30mおきに、赤布の付いた竹竿が打ってあるのだが、視界が10mなので、大変である。凍てついたコンパスを振り振り、推定した方向へゆっくり進んで、目を凝らす。時折、白の濃度が薄くなって、赤布らしきものが浮き出ると、「それっ!」とばかりに、進むのである。それに、この辺のシュカブラは、高さ1-2mで、それを迂回したりしていると、忽ち方向を見失う。

 明らかに下りとなるあたりで、シールを外すが、視界が効かないので、怖くてスピードが出せない。ナメクジが進むように、ズリ、ズリと進んで行く。赤布を見失ったら、そこでビバークだ。風雪いよいよ強く、「モンスターの陰でのビバークは、悲惨だろうなあ・・・」などと思いつつ、必死で前進する。一度、二本の赤布竿と一個のプレートの成す三角形の中で、グルグル回りをやってしまい、自分自身のトレースの向きに、頭が混乱する。コンパスを振って向きを決め、思い切って進む。幸い、次の赤布を発見でき、モンスターとの同衾は避けられた。

 だいぶ下がって、モンスターの白い外套の下に、緑の枝が見え始めるあたりまで来ると、雪は軟らかく、かつ重くて、スキーのトップが雪面から出せず、地獄のラッセル滑降となる。尤も、殆ど滑らないので、ズボーッ、ズボーッと、歩いているわけだ。

 いい加減イヤになって、左手のアスピーデラインに「エスケープ」したのが、また悪かった。いつしか雪は雨に変わっていて、ウネウネと蛇行する車道の雪は重く、「もぐる」だけであって、全く「滑り」はしない。冬用ダブルヤッケは防水が効かず、全身ビショ濡れになり、今日中に下山する可能性を諦め、ただひたすら、「ズボーッ、ズボーッ」を繰り返す。

 陵雲荘を出てから約三時間、ようやく硫黄臭い1150コルに至る。ここでシールを着けて、アスピーデラインから離れ、山毛森への登りに取り掛かる。山毛森山頂付近に、「八幡平無線中継所」なる施設があり、その庇の下にツェルトを張る。雨が降っているので、この庇は有り難かった。

【3月6日】 晴
 昨日の雨で全身濡れており、シュラフまで濡れて寒い。1:00に起きて、コンロを空焚きする。ツェルト内がムワーと暖かくなる。寝る前にこれをやれば良かったのに、と後悔する。身体がだいぶ乾いたので、3:20に再び寝る。5:00に起きてみると、昨日の雨で濡れた物は、悉く凍り付いており、気温の急激な低下が窺われた。

 撤収して、ガリガリにクラストした、山毛スキー場のピステを、独占して滑降する。大沼温泉まで滑降したら、除雪道路へとクライムダウンし、この除雪道路を快適に滑走する。次第に舗装の路面が現れ、スキーの滑走面が削られるようになると、トロコ温泉だ。

 トロコドライブインでスキーを外し、トボトボ歩く。一部スキーを使ったが、あとは歩きで、途中、スノトレに履き替えて、志張温泉まで下る。

 ここで下山報告をして、バスで花輪線八幡平駅へ出て、盛岡経由で帰京する。

スキールート図

MR121_ '82東北スキーツアーシリーズT:磐梯山・猫魔ヶ岳・雄国沼スキーツアー(磐梯)'82-02

MR122_ '82東北スキーツアーシリーズU:岩手山〜焼切沢スキーツアー(岩手山)'82-03

の表紙へ
本館トップページへ