松木川仁田元沢・庚申山・皇海山・袈裟丸山(足尾)

date 1981/7/4-6 (夕発2泊3日)
コース 間藤駅〜仁田元沢出合〜仁田元沢〜庚申山〜鋸山〜皇海山〜鋸山〜六林班峠〜袈裟丸山〜賽ノ川原〜寝釈迦〜沢入駅
実働 第二日:11h13m、第三日:6h48m、計:18h01m。
メンバー すうじい(単独)
概要 美しい渓、源頭の鹿の群、庚申・皇海・袈裟丸の静かな縦走路。
荷重 13kg + 水2L
行程 =:バス・鉄道、→:山道、:溯行、\\:藪漕ぎまたは詰め
【7月4日】 曇時々霧雨
北千住17:24=19:15大田19:37=20:14相老20:27=22:01間藤(泊)

【7月5日】 曇のちガス
間藤4:00→ダム4:40→大堰堤上川原5:10→5:30小堰堤上5:459:00迷いの二俣9:2510:08明るい中洲10:2011:35源流の二俣12:20\\庚申山12:55→13:50薬師岳14:00→14:40鋸山15:05→16:00皇海山16:05→16:50鋸山16:55→17:35六林班峠BP(泊)

【7月6日】 曇のち晴
六林班峠BP 5:00→6:03法師岳(1941P)6:20→7:10 1957.6P 7:20→8:03中袈裟(1903P)8:10→後袈裟丸(1898P)8:35→9:00袈裟丸山9:25→小丸山10:22→10:57賽ノ河原11:00→11:05避難小屋(水)11:15→11:38寝釈迦11:43→12:15下長手橋12:20→13:10沢入駅14:07=15:12相老15:48=16:13大田16:29=19:23北千住
記録 【7月4日】 曇時々霧雨
 足尾線の最終に間に合うかどうか、ハラハラしながら、東武伊勢崎線に乗る。うまく接続して、セーフ。間藤は無人駅で、外の小雨をよそに、駅舎に寝る。夜通し、駅前の通りを、乗用車が走っていた。松木川のクライマーか、はたまたラリーの練習か。

【7月5日】 曇のちガス
 例によって、あまりよく眠れぬまま、3時半起き。薄明の足尾の町を、地下足袋で急ぐ。銅山の鉱場付近は、赤黒く乾いた、死の谷だ。203高地を思わせる、灼き尽くされた風景。緑のカケラも無い地獄の山肌。久蔵沢出合の人造湖を、ぐるりと回って、仁田元沢に沿った林道へ。林道が大きな支沢を渡って、大堰堤を過ぎてから、川原へと降りる。

 工事中の小堰堤を、左から越した所で、草鞋を着ける。岩は花崗岩が多く、概ねフリクションが良く効く。川原のゴーロを歩いて行くと、両岸ともに岩壁になった所に、巨大な堰堤が二段になって出現する。「げえっ、これではとても巻けそうにないぞ。」と暗い気持になる。だが、よく見ると、左手に人に踏まれた跡があって、ザレをジグザグに登って巻いている。「助かったぜ。」

 さらにしばらく行くと、滝が現れる。やっと、中流の核心部で、岩盤が顕著となる。右から枝沢の15m滝が水煙を上げて落ちている所で、流れは左へ直角に曲がる。ここは、15m滝のシャワーを若干受けつつ右を行く。次の2m幅広を右から越え、左に移って、水流の強い4m岩々滝の釜ヘツリは左。この釜のヘツリ、滝共に、やや悪い。

 しばらくゴーロを行くと、流れは右へ曲がって、浸食の美しい花崗岩のゴルジュとなる。銅イオンの存在?を意識させる、青緑の濃い淵と、白い岩肌。3mCS滝は左の大岩の左を登る。小滝を時々交えたゴーロがずっと続いた後、(1:1)の二俣に出る。ここで、しばらく悩む。1250M地点だったようだ。

 右俣は、2段10m滝がある。岩の苔生し方で、左俣の方が古くからの流れと見て、左俣に入る。樹林で暗い、苔生した沢を行くと、前方に登れそうもない滝が見える。「しまった!ルートミスか?」しかし、よく見ると、左側に立派な鹿道があって、人も踏んでいるようなので、これを利用して巻く。これが大滝20mである。しばらく連瀑帯で、流れは急だ。上流の核心部と言えよう。

 これを過ぎると、明るい草地に出て、(3:1)の二俣となる。中洲の中央に岩があって、気持ちが良い。再び樹林帯の流れを進み、やがて笹の中の流れへと変わる。最後の4m滝を越えれば、まさに源流、笹原の中の細流となる。最後の二俣は、栂と岳樺の疎林で、丈の低い笹が地を覆っている別天地。

 ここまで来れば、安心だ。地下足袋を登山靴に履き替え、ヘルメットを外し、ゆっくりと昼食を摂る。右の笹の下の流れが本流らしいが、はじめの計画通り、左の流れをツメることにする。すぐに小尾根に出て、あとは地図とコンパスで、方向を見定めつつ、鹿道を拾う。しばしば、「キューン」と鳴いて逃げる鹿たちの、可愛い白いハート型のお尻を見掛ける。最後に、10分ほど藪漕ぎして、庚申山頂に到達する。

 予想より早く、庚申山に着いたので、早速縦走に色気付く。鋸山への縦走は、もうバテバテ。鋸山で行動食を摂るうち、元気回復して、皇海山へ出発する。鋸山付近で、この山行中唯一の登山者に出逢う。日曜日のこの時間帯では、他の数人いたという登山者達は、既に下山して行ったらしい。

 皇海山への縦走路は、笹藪で下りのルートファインディングが大変だろうな、と思っていたら、案の定、帰路でルートミスして、5分ほどロスした。足尾の稜線は、MWV(明大ワンゲル)ならぬ、MWCのプレートが多い。皇海山をサブした後、六林班峠へと下る。峠の切り開きに、ツェルトを張る。夜半に小雨。

【7月6日】 曇のち晴
 昨日は、予想外に道のりを稼いだので、今日は気楽である。六林班峠〜袈裟丸山の稜線の踏跡は、細々ながらしっかりと続いている。しかし、笹藪が深いため、下りは迷い易い。この稜線は落ち着いた雰囲気で、昔の奥秩父がきっとこんな感じだったのだろうな、と勝手に想像しながら、縦走を続ける。この稜線は、単独での縦走がお奨めだ。廃道の落ち着きを、主稜線が有しているなんて、最高だ。

 袈裟丸山からの下りでさえ、ミスルートしてしまった。笹藪が深いのだ。一般ハイキングルートだと、甘く見てはイケナイ。人が、あまり入っていないのだ。小丸山から先は、さすがに道はしっかりしている。賽ノ河原下の避難小屋は、古そうだが、清潔で、雨風はしのげる。すぐ近くに水場(塔ノ沢)がある。

 早く帰京したいので、飛ばして下る。昼過ぎには、沢入駅に着く。ビールを飲んで、駅のベンチに坐っていると、じわーっと「やった、無事成功したんだなあ・・・」という気持がこみ上げてきた。単独で来て良かった。充実した山行だった。

溯行図

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