梓川二ノ俣谷〜中山コル〜一ノ俣谷滝見(北ア)

date 2008/7/18〜20、23 雨のち曇、晴、晴時々曇、晴
コース 上高地〜二ノ俣橋〜二ノ俣谷峠沢溯行〜中山コル〜一ノ俣谷山田滝〜一ノ俣谷溯行〜常念乗越〜常念岳〜蝶ヶ岳〜横尾〜涸沢カール(定着)〜横尾〜上高地
実働 第一日:8h35m、第二日:9h15m、第三日:9h05m、下山日:4h、計:30h55m。
概要 二ノ俣谷から中山コル越えで一ノ俣谷、滝見後常念小屋へ。
メンバー すうじい(単独)
行程 →:山道、:溯行、\\:藪漕ぎ・踏跡不明瞭、=:交通機関。
【7月17日】
新宿23:00=(さわやか信州号)=

【7月18日】 雨のち曇
=5:30上高地6:15→7:00明神館7:20→8:05徳沢8:15→9:10横尾9:35→10:30一ノ俣橋10:35→10:45二ノ俣橋11:00\\11:20渓流足袋11:3012:33 1800M右岸枝沢12:431830M右岸枝沢12:5413:20小休13:301860M右岸枝沢13:3513:45峠沢出合下広河原14:1014:45 1970M左岸枝沢14:5015:05 2000M広河原15:20\\17:20中山コル(幕営)

【7月19日】 晴
中山コル6:25\\6:55一ノ俣谷7:007:20転倒デポ地点7:459:03常念滝9:4810:35山田滝11:10常念滝12:2013:25ザックデポ14:1015:30 2190M二俣15:40\\16:00右岸崩壊地16:15\\常念小屋水源ドラム缶16:55\\→17:25旧水源小屋17:30→\\18:30常念小屋(泊)

【7月20日】 晴時々曇
常念小屋4:55→5:55休6:05→6:35常念岳6:55→7:42休7:57→8:14 2512P 8:19→9:00 2592P 9:40→10:00休10:05→10:35休10:55→11:10蝶槍11:35→11:45 2625分岐11:50→12:20休12:30→12:50休13:00→13.:25槍見台13:40→14:00横尾14:20→14:50休14:55→15:25休15:30→本谷橋15:36→16:00休16:10→16:40休16:45→17:20雪渓上17:25→17:50涸沢ヒュッテ(定着)

【7月21日】 快晴
(涸沢定着)

【7月22日】 晴のち曇
(涸沢定着)

【7月23日】 晴
涸沢ヒュッテ9:20→10:10本谷橋10:15→11:00横尾11:05→11:45新村橋11:50→12:45明神館12:50→13:40上高地14:00=18:15新宿
使用装備 革登山靴、渓流足袋、ヘルメット、ピッケル、幕営用具、ガスコンロ、コッヘル、防虫ネット、携帯虫避け、E-1、ED12-60mmF2.8-4.0、三脚、μ-725SW
不用装備 細引
記録  数年に一度程度、北アルプス穂高岳の涸沢カールに定着して、ボランティア的なことをやっている。その入山時に、寄り道をするのが楽しみだ。今回は、かねてより気になっていた、梓川一ノ俣谷左岸に懸かる常念滝・山田滝を見物しようと企てた。

【7月18日】 雨のち曇
 新宿から夜行バス「さわやか信州号」に乗り、殆ど眠れぬまま、5時半に上高地へ到着した。予想していたとは言え、ハナからの雨である。重荷を担いで、黙々と二ノ俣谷出合を目指す。明神、徳沢、横尾と、45分、45分、55分と順調なペースで歩く。

 横尾近くまで来ると、すぐ近くに猿が現れ、カメラを向けるとこちらを威嚇する。知らんぷりをしていると、笹の新芽を食べているようだった。増築工事中の横尾山荘でウドンでも食べようかと思ったが、食事はラーメンのみで、10時からだと言う。待てないので、イオン飲料のみ購入し、先へ進む。

 横尾から1時間強で、二ノ俣谷出合にある二ノ俣橋を渡る。二ノ俣橋を渡った所から、二ノ俣谷右岸の藪を漕ぐ。いきなり倒木に邪魔される。20分ほど右岸沿いに進み、徒渉のためにフェルト足袋に履き替える。

 結構な水量があるので、慎重に徒渉する。革登山靴を首から下げ、ゴーロ歩きを続け、時折、徒渉やヘツりを強いられる。途中、雨が降ったり、日が射したりして、2時間ほどで、大量のガレゴーロの押し出す、1830Mの顕著な右岸枝沢出合となる。更に30分ほどで、1860Mの顕著な右岸枝沢出合だ。

 1860m右岸枝沢出合から、10分ほどで、峠沢出合下の広河原に至る。この地形は特徴的なので、峠沢を見落とすことはないだろう。この辺り、幕営適地となっている。実際の峠沢出合は、もう少し上流である。

 左岸広河原で休憩後、フェルト足袋から登山靴に履き替えて、少し進むと、1885M左岸峠沢出合となる。このゴーロ沢を詰めれば、2269中山コルに出るはずだ。次第に傾斜が出てくるが、やや濡れたゴーロ沢という印象だ。革靴だと滑り易いので、慎重に登る。

 30分強登ると、1970M左岸枝沢が、顕著なガレゴーロ沢として出合う。さらに15分ほど登ると、2000M付近の傾斜のある広河原状となり、本流はゴーロ状のまま、ゆっくりと左へ曲がる。右手の林の中に、中山コルへ突き上げる沢を見出す。

 中山コルへ向かう沢沿いに、獣道を拾って登る。やがて水は涸れるが、明確な踏跡は見られず、幾筋かの獣道状が続く。次第に傾斜が増し、藪っぽくなってくる。時折、色褪せた目印布が付けられているが、あまりあてには出来ない。樹林帯のズルズル急斜面となり、寝不足と重荷に、なかなか高度が稼げない。

 2000M広河原から苦闘2時間、やっとのことで、予想外に痩せた、2269中山コルに出た。午後5時を過ぎていることもあり、傾いたテント1張分のスペースで、ビバークを決定する。水は700mlほどしか担いでいなかったが、なんとか一晩凌ぐことが出来た。シュラフカバー2枚では、夜中にかなり寒かった。

【7月19日】 晴
 テントを撤収して、コル付近の踏跡を調査するが、あまり明瞭なものは無かった。立木に巻かれた、色褪せたテープや布切れが多い場所が、どうやら皆さんの利用するルートのようであった。赤ビニテを追加し、一ノ俣谷へと下降開始する。なるべく踏まれた所を、窪状に沿って下って行くと、次第に濡れたカレ窪となってくる。特に問題なく、30分で一ノ俣谷へと降り立つことが出来た。

 振り返れば、コル沢出合は極めて藪っぽく、ハッキリした目印になるものは、何も無さそうだ。真西に向かって、コル沢を登れば良いわけだが、地図読み能力が問われる所であろう。帰りのことを考えて、赤ビニテを付けておこう。

 この辺りの一ノ俣谷は、全く平凡なゴーロ沢となっている。しばらく、登山靴のまま、右岸沿いに一ノ俣を下って行く。少し下ったところで、足が滑ってもつれ、顔から倒木に倒れた。見え方がピンボケになったので、メガネの外れたのが判ったが、どこにもメガネは落ちていない。フレームが、頬に刺さっていたのだ。引き抜いて、15分ほど圧迫止血する。

 目印用の赤ビニテを利用して、フレームとレンズとレンズ固定テグス糸をガッチリ固定した。壊れかけのメガネでは、予定コースの中山コルの藪漕ぎと二ノ俣谷のヘツり下りには、耐えられそうもない。常念乗越へのエスケープは、遠回りではあるが、やむを得ないであろう。その場にザックをデポし、フェルト足袋に履き替えて、常念滝と山田滝を見物することにしよう。

 ザックデポ地点から20分ほど下ると、2095M左岸枝沢出合となる。この辺りから、右岸には踏跡状を見るが、藪っぽいので、辿ってもさほどメリットは無い。なるべく沢沿いに進んだ方が、速い。2040M右岸枝沢出合付近で、スノーブリッジが出現する。右岸側を巻き気味に通過する。この辺り、沢沿いの通過が困難な場合は、右岸に旧登山道跡を辿ることが出来る。

 やがて、左岸に懸かる常念滝が見えて来て、嬉しくなる。常念滝は、下段10mほどの美しい滝だ。右岸の大岩脇から巻道が始まる。大岩の上に三脚を立て、常念滝を撮影する。ここから見ると、下段10mの上に、上段4mが続いているのが判る。

 さらに旧登山道跡の巻道を辿るが、途中、振り返ると、常念滝が望まれる。常念滝から45分ほどで、山田滝8mに至る。山田滝の下には、出合の前衛3m滝が懸かる。今回は、この下流にある一ノ俣ノ滝見物は断念して、ここで引き返すことにする。

 山田滝から30分ほど溯行すると、4m2条トヨナメ滝となる。ここは、右岸側を小さく巻く。下降時は、右岸側の旧登山道を辿ることが多かったが、沢通しまたは小さく巻く方が速い。さらに30分ほど溯行すると、3m階段状滝の上流に常念滝が見えてくる。この階段状滝も、右岸側をヘツり気味に越える。

 常念滝出合下流は、左岸がフェース状大岩壁となっている。一ノ俣谷本流は、トヨ状階段滝を懸ける。下降時は、右岸側の巻道を辿ったのだが、溯行では、左から越え、ガリー状を登って右岸大岩の下へと入り込む。右岸大岩の下から、常念滝の瀑風と飛沫を避けつつ、手持ちで撮影を試みる。その後、大岩沿いに常念滝の前を通過する。

 常念滝を後にして、沢沿いに溯行する。2040M右岸枝沢出合付近のスノーブリッジは、右岸をトラバース気味に通過する。常念滝から1時間ほどで、ザックデポ地点に戻る。再び重荷を担ぎ、首から登山靴をぶら下げて、平凡な一ノ俣谷を、ヨタヨタ溯行を続けるが、なかなか捗らない。

 ザックデポ地点から、1時間20分で、常念乗越沢分岐である2185M二俣に至る。乗越沢へ入ると、間もなく、右岸側に旧登山道跡が現れる。しばらくこれを辿る。2235M右岸大ガレで、旧登山道跡は、左岸に渡る。この踏跡に突入するが、とんでもない藪漕ぎを強いられ、途中で断念して沢に戻る。右岸大ガレから、2290M右岸水源の沢までは、旧登山道跡は利用不能と思った方が良い。

 2290M右岸枝沢は、傾斜のあるゴーロ沢状で、常念小屋の水源となっている。青いドラム缶が目印だ。この辺りから、右岸側に踏跡が復活し、曲りなりにも利用出来るようになる。

 この後は、旧登山道跡もしくは小屋の水源黒ホース沿いに登高してゆく。水源の沢から常念小屋まで、約150Mの高度差は、風も無く虫の多い樹林帯で、本当にシンドかった。休憩時は、防虫ネットが重宝する。旧登山道は、最後にハイマツ藪に突入するため、直前に常念小屋の信州大診療所裏へとエスケープした。

 この日は、常念小屋へ泊まる。連休とあって、やや混雑していたが、布団一枚に一人寝ることが出来た。夕食後、頬の傷が化膿しないか心配だったので、診療所ドクターに相談し、念のため抗生剤を頂いた。感謝。

【7月20日】 晴時々曇
 常念小屋でたっぷり睡眠を取り、5時少し前に歩き始める。荷の重さに負け、2750M肩状で小休を入れる。小屋から実働1時間半で、山頂の祠前に至る。山頂の南東側は、烏川本沢の常念沢源頭であり、急な谷に雪渓が残っている。

 常念岳から、大下りが始まる。2620-30M付近で、西へ下るガレに誘われ、ミスコースしてしまうが、すぐに岩々帯をトラバースして、事無きを得る。2512P手前の2460Mコルに近い辺りで、ウラジロヨウラクの小群落を見る。

 2460Mコルから登り返して、2512Pに至る。当然のように、小休を入れる。ザックが肩に食い込んで、痛い。西側には、虹が出ていた。ここからは、次のピークである2592Pとその奥の蝶ヶ岳〜大滝山の連なりが望まれる。まだまだ、先は長そうだ。

 2512Pを過ぎると、2490MPの西側をトラバースして、2592Pへの登りにかかる。樹林帯の登りに汗をかき、2580M肩付近の風通しの良い場所で、休憩する。さて、再び歩き始めると、もうすぐ2592Pだとは思っていたが、一、二分でお花畑の山頂に出てしまった。

 北東側のお花畑には、ハクサンチドリが多い。南斜面は、とにかく、ニッコウキスゲの多いお花畑である。ザックを下ろして、カメラを出そう。咲き始めのニッコウキスゲ群落の向こうに、蝶槍が見える。南斜面を下って行く途中には、ハクサンフウロが多かった。

 2592P南面のお花畑を下って行くと、やがて蝶槍との間の平坦地形へと入る。右手に池を見て、最低鞍部である2462独標となる。再び登りとなり、樹林帯を抜けて、見晴らしが良くなる。2600M付近まで登ったところで、チシマギキョウの群落に出くわす。撮影の口実で、ザックを下ろす。

 蝶槍は、なかなか展望の良い場所なのだが、この日は残念ながら、槍・穂高の稜線が雲に隠れていた。他の登山者達も、残念がっていた。蝶ヶ岳の三角点ピークから、小屋裏のピークまで、なだらかな尾根が続く。

 蝶ヶ岳三角点を過ぎて、2625の分岐で小休。いよいよ、横尾への大下りである。このコースは、下り1回、登り2回の経験があるが、樹林帯の急勾配が延々続くので、登りも下りも辛いところである。途中、1回の小休を入れ、実働50分で、展望を得られる場所に出る。このコースで展望が得られるのは、この展望台と、槍見台ぐらいである。

 さらに25分下って、槍見台に至るが、雲に隠れて、槍の姿は見ることが出来ない。さらに20分で、横尾に着いた。

 横尾から実働1時間強で、本谷橋に至る。結構、水量は多いようだ。屏風の頭から続く尾根を回り込む辺りで、横尾右俣が目に入る。カール尻から下に、雪渓が多く残るのが判る。同じ場所から涸沢方面を見遣ると、まだまだ先は長い。

 涸沢は、全く伏流しておらず、沢音がずっと聞こえていた。トラバースから、沢に近付けば、雪渓がベッタリ残っている。今年は、ヒュッテまで、二ヶ所の雪渓が続いていた。こうして、涸沢定着が、始まったのだった。

【7月21日】 快晴
(涸沢定着)

【7月22日】 晴のち曇
(涸沢定着)

【7月23日】 晴
 早くも下山日となってしまった。下界は猛暑の日々という情報に、ちと憂鬱になってしまう。

 バスの時間があるので、横尾経由のノーマルルートを辿る。本谷橋から梓川右岸林道を歩き、明神で左岸へと戻る。明神から下は、観光客だらけだった。

 結構荷物が重かったので、時間が掛かるかと思ったが、意外と早く下れて、実働4時間で上高地に着いた。16時のバスを、14時に変更して貰い、新宿に18:15には到着できたのだった。

遡行概念図

アルバム

7月18日、横尾の猿
横尾の猿
二ノ俣谷峠沢出合下広河原
二ノ俣谷峠沢出合下広河原上流側
二ノ俣谷峠沢出合下広河原下流側
二ノ俣谷峠沢出合のゴーロ
峠沢を登る
峠沢1970M左岸枝沢
峠沢2000M付近広河原
7月19日、・2269中山コル幕営地の朝
中山コル付近樹林
藪っぽいコル沢
一ノ俣谷コル沢出合上流側
一ノ俣谷2095M左岸枝沢
スノーブリッジ出現
常念滝が見えた
一ノ俣谷左岸常念滝下段
一ノ俣谷左岸常念滝下段
一ノ俣谷左岸常念滝
一ノ俣谷右岸巻道から常念滝
一ノ俣谷左岸山田滝
一ノ俣谷左岸前衛滝と山田滝
一ノ俣谷4m2条トヨナメ
一ノ俣谷3m階段滝と左岸常念滝
常念滝出合下流から
大岩下から常念滝
一ノ俣谷スノーブリッジ
一ノ俣谷2185M二俣
2290M右岸常念小屋水源の沢
7月20日、常念岳山頂の祠
常念沢源頭の雪渓
2460Mコル付近で、ウラジロヨウラク
ウラジロヨウラク
2460Mコル付近から、2512Pを望む
2512Pから常念岳
2512Pから見た虹
・2512Pから、・2592Pと蝶ヶ岳
・2592Pお花畑と蝶槍
・2592Pお花畑のニッコウキスゲ
・2592Pお花畑のニッコウキスゲ
・2592Pお花畑のハクサンチドリ
・2592Pお花畑のハクサンフウロ
蝶槍のチシマギキョウ
蝶槍のチシマギキョウ
蝶槍から中山コル・大天井岳
蝶槍から常念岳・大天井岳
蝶槍から三角点ピーク・小屋裏ピーク
下降尾根展望台付近
展望台から赤沢岳
本谷橋
屏風ノ頭から涸沢出合に続く尾根を回り込む辺りから、横尾右俣とカール
屏風ノ頭から涸沢出合に続く尾根を回り込む辺りから、涸沢

MR294_ 二ノ俣谷・大天井岳・燕岳(北ア)

渓流の部屋
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