赤谷川本谷・万太郎山(上越谷川)

MR453 赤谷川本谷・万太郎山(上越谷川)

date 2002/10/11-13 快晴、快晴、快晴
コース 川古温泉赤谷川林道ゲート〜赤谷川徒渉点〜赤谷川本谷〜オジカ沢ノ頭西方国境稜線〜万太郎山〜毛渡乗越〜赤谷川徒渉点〜赤谷川林道ゲート
実働 第一日:2h20m、第二日:8h50m、第三日:7h20m、計:18h30m。
概要 赤谷川林道ゲート基点、快晴三日間、前半大高巻き連続の険谷、後半長閑な草紅葉の美渓。
メンバー すうじい(単独)
行程 →:山道、:溯行、\\:高巻き・藪漕ぎ
【10月11日】 快晴
月夜野IC12:45=13:05猿ヶ京温泉13:30=13:55川古温泉赤谷川林道ゲート14:50→赤谷川
林道終点16:20→17:10赤谷川徒渉点(幕営)

【10月12日】 快晴
赤谷川徒渉点6:30マワット下ノセン7:15\\同上7:307:35マワットノセン7:55\\同上8:15
9:50巨岩帯後半大岩上10:0010:35裏越ノセン左岸11:2011:35同右岸11:45\\同上12:15
12:30日向窪出合12:35二段チムニー滝下12:50\\13:35小尾根上13:55\\トラバース
開始点14:20\\14:50ドウドウノセン上14:5515:00 8m滝15:15\\1395M左岸枝沢15:57
ゴルジュ内1415M左岸枝沢16:4017:30ゴルジュ上1445M付近(幕営)

【10月13日】 快晴
ゴルジュ上1445M付近6:407:45 1500M左岸枝沢8:001515M三俣8:108:35 5x10m滑滝
1580M右岸枝沢8:408:50 1590M右岸涸窪9:109:15水枯れ9:25\\9:45 1710M付近
国境稜線登山道10:00→10:25大障子避難小屋10:55→12:05万太郎山12:25→12:55毛渡乗越
13:05→13:25休13:30→13:35小沢5m滝13:40→マワット下ノセン滝見台14:05→14:15エビス
大黒沢徒渉点14:20→14:35赤谷川徒渉点15:05→15:40赤谷川林道終点15:45→16:10休16:20
→17:05川古温泉赤谷川林道ゲート17:30=月夜野IC
記録  20年来の憧れの沢、赤谷川本谷を溯行した。残雪の国境稜線を、スキー担いで縦走した時、純白の赤谷川源頭に、見惚れたものだった。源頭の草紅葉に期待して、敢えてこの季節を選んだが、寒さで眠ることが出来ず、閉口した。下部の高巻きや巨岩帯通過では体力を消耗したが、ドウドウノセン上の8m滝を過ぎてからの、流れの美しさは、例えようが無いほどだった。帰宅後、半月ほど体調を崩してしまったのは、体力の限界を越えた山行であった、ということであろう。

【10月11日】 快晴
 赤谷川林道ゲートは、川古温泉のすぐ裏にあり、長い林道歩きを強いられる。今日の内に出来るだけ先へ進んでおこうと、林道をひたすら歩く。林道終点を過ぎ、杣道に入ってすぐの林の中のサイトを見送り、結構悪い杣道を辿って、結局、エビス大黒沢出合の赤谷川徒渉点まで至る。

 徒渉点にはろくに川原も無いが、ミニ川原を整地してテント一張分を確保、連日快晴の天気予報を信じて設営する。瀬音がうるさく、寒くてろくに眠れない。

【10月12日】 快晴
 開けた沢を進むと、釜を持つ石小滝を越える。右岸に10m滝を懸ける枝沢を見て、2段8m滝で出合う越ノ滝沢を過ぎれば、マワット下ノセンのゴルジュとなる。マワット下ノセンは、その上部のみ姿を覗かせている。右岸の草付小尾根に取り付いて、簡単に巻き、滝上の滑に下降する。

 すぐに、右岸から、東ノ滝沢が2段8m滝で出合う。その奥には、2段10m程度の滝も見える。川原を少し歩けば、右岸から熊穴沢が、2段3m滝の上に8m滝を懸けている。やや右手から、大きな滝壺にマワットノセンが落下する。右壁には、岩小舎状の窪みが見える。右岸をヘツって、僅かに水流のあるガレルンゼに取り付き、少し登った所から、薄い踏跡を追って右上へ斜上する。あとは、なるべく踏跡を外さぬように辿っってゆき、滝上に出る。

 平凡な感じの大岩ゴーロ帯が始まるが、次第に手に負えないほどの巨岩帯となる。まるで城壁の弱点を捜すアリンコのように、、巨大迷路のような所を、行きつ戻りつして、時間を食う。大岩の間を潜り抜け、空身でよじ登り、ザックをシュリンゲで引き上げる。筋肉疲労も著しい。

 こうなると、右岸の大岩壁沿いに、踏跡を辿る方が効率的だ。いつの間にか、左岸は大スラブ壁となっている。ひたすら右岸沿いに、踏跡を辿る。巨岩の上で小休を入れよう。この後、次第に傾斜が増し、水流沿いは大岩滝連続の様相だ。やがて、傾斜が緩くなると、大岩ゴーロの上に、裏越ノセンの水流が見えて来る。裏越ノセン近くでは、右岸の大側壁が威圧的だ。

 裏越ノセンの大釜正面には、高巻きのルンゼが突き上げている。やや右手から滑り落ちる裏越ノセンの水流は、今日は裏越えも可能そうな水量である。釜の右岸のヘツリは、重荷ではちと無理そうだ。ひとしきり撮影した後、意を決して、釜の横断に掛かる。しかし、股程度まで水に浸かった所で、その冷たさに耐えきれず、引き返す。だめだ、こりゃ。

 そこで、雨具とザックカバーを出して、裏越えモードに入る。水流の裏を通過するまでは、容易であった。問題は、左壁バンド状のトラバースである。ザックが被り気味の岩に引っ掛かり、とてもイヤらしい。慎重に、時間をかけて、通過する。更に、滑り易そうなクライムダウンの後、やっとルンゼ下に到達する。

 雨具とザックカバーを仕舞って、今度は高巻きモードに入る。不安定なガレルンゼを、詰めるのだ。イヤになるほど登って行くと、急傾斜の草付状のクボになり、やがて右手に薄い踏跡が現われるので、これを辿る。小尾根に乗ると、灌木帯だが、これを越えると、笹藪帯となり、踏跡不明となる。真っ直ぐ下ってしまうと、登りにくそうな、岩盤をえぐるトヨ状滝の下に出てしまうので、しばらく上流側へトラバース気味に、笹藪を漕ぎ下る。

 降り立った所は、日向窪出合のすぐ手前であった。日向窪出合の滝は、その名の通り、良く陽の当たる水量の少ない滑滝だ。本流の滑床状を少し進むと、すぐにドウドウノセン入口の小滝がある。引き返して、日向窪に入る。

 幾つかの小滝・滑滝を越えると、水量が減るので、大高巻きに備え、水を補給しておく。そのすぐ上に、2段チムニー滝が見えたので、右手の草付斜面に取り付いて、登り始める。やがて笹藪急斜面となり、腕力で登って行けば、灌木混じりの笹藪斜面が蜿蜒続く。この藪漕ぎの最中に、お気に入りのステッキを紛失してしまった。

 疲労困憊する頃、やっと顕著な小尾根上に出て、ツェルト一張分の切り開きで休憩する。日向窪から離れて、45分程の苦闘であった。この小尾根上には、踏跡があるので、これを辿って登って行く。小岩壁の右下をトラバースし、草付斜面上部の薄い踏跡を辿って、顕著な尾根に乗る。1507独標から西南西に続く尾根である。この尾根を登って行くと、やがて右手へトラバースする踏跡が現われる。休憩した切り開きから、25分程であった。

 一本松とでも呼びたくなる、顕著な針葉樹があり、この木の根を掴んで、一段下り、トラバースの踏跡を辿る。やがて、草付の小尾根上に乗るが、これがドウドウノセン出口に続く小尾根のようだ。目の前には、草付スラブが広がっている。草付小尾根の東側沿い、草付スラブの西側を下降して行く。最後は、流水溝状を下って、一本松から30分程で、ドウドウノセン上の川原に降り立つ。結局、日向窪出合から、ドウドウノセン上川原まで、大高巻きに約二時間掛けたことになる。

 水量が少な目なので、ドウドウノセン落口を見物する。最上段の滝壺を覗くと、滝壺からの落口らしき所は乾いており、水の流出路は伺うことが出来なかった。最上段からして、すでに謎である。

 川原をのんびり進むと、左岸から枝沢が、小滝スダレ階段状を懸けている。川原が左へ屈曲すると、ゴルジュの奥に、8m滝が懸かる。ここは、右岸の草付から取り付いて、笹藪斜面をトラバースするが、ゴルジュが意外に長くて、大いに消耗する。

 やっとの事で、8m滝上の岩盤に降り立つと、思わず声を上げてしまうほどの、美しい流れであった。美しい滑床や川原を辿り、4x7m滑滝を越すと、しばらくは平凡ながら穏やかな流れが続く。緊張も解け、これなら何処でも幕営出来そうだ、と思いながら溯行を続けると、左岸から1本、続いて右岸から3本の枝沢が出合う。やがて釜と小滝が連続する上部ゴルジュ帯が始まる。

 既に16時を過ぎていたので、一瞬迷ったが、さほど側壁が高くないので、恐怖感もなく足を踏み入れる。入口の釜を持つ小滝と続く3m滝を越えると、2段3m滝、そして小滝大釜となる。大釜の左岸をヘツるが、意外と大変だ。シュリンゲ1本残置。小滝は取り付けないので、右壁をよじ登って越える。さらに小滝を幾つか過ぎると、左岸から(3:1)の1415M枝沢が4m階段滝で出合う。ここで、16時40分であった。

 しかし、上部ゴルジュ帯はまだまだ続き、結構深い小釜を持つ小滝が連続し、ヘツリで意外に時間を食う。絵になりそうな、美しいミニゴルジュなのだが、薄暗くなって来ているので、内心かなり焦っていた。やっとのことで、上部ゴルジュ帯を抜け、左岸から枝沢が出合うと、両岸は草地斜面となり、源流の様相だ。既に薄暗くなってきており、目を皿にして川原を捜す。

 17時30分、1張分のサイトを見付け、直ちに整地・設営する。1445M付近であろうか。ジャージの膝から下が濡れているので、昨夜よりも更に寒くて、眠れなかった。

【10月13日】 快晴
 二晩続けてろくに眠れなかったためか、体調は最悪である。天気は今日も快晴で、最高である。何とか気合いで撤収して、朝日が当たり始めた稜線を見上げながら、溯行を再開する。足取りは重く、今日中の下山も、ギリギリかも知れないな・・・などと考えながら先を急ぐ。

 小ナメ岩畳2条を過ぎ、右岸から(1:3)、(1:5)の枝沢が出合うと、本流は右へ大きく屈曲する。左岸には、湿原状台地が出現し、秋枯れで薄茶色の世界だ。小滑滝を過ぎ、右岸から(1:10)の枝沢が出合うと、本流は滑床となる。釜を持つ小滝を越え、滑を行くと、奥に6m滝を懸ける1500M左岸枝沢が、(5:1)で出合う。ここで小休しよう。

 さらに本流を溯ると、4mスダレ滝で、正面には小障子ノ頭の斜面が見える。これを越えると、1515M三俣で、右岸の枝沢に過ぎない左俣を見送り、滑を進むと、中俣と右俣が(1:3)で出合う。右俣の方が水量多く、小滑滝で出合っている。国境稜線の登山道に早く出ることが出来そうな、中俣に入る。

 中俣に入って、水量は減るものの、小滝・小滑滝が意外と連続する。水が涸れてからも、涸棚・涸れ小滑滝を快適に登り、適当な所から右岸の涸れ窪に入る。笹に覆われた涸れ窪を少し登ると、草地に飛び出したので、笹藪との境界沿いに登り、草地の上限から左へ笹をトラバースすると、簡単に登山道に出た。1710M付近であろうか。

 体調も良くないので、谷川岳・オジカ沢ノ頭のピークハントを断念し、万太郎山方面へ、縦走を開始する。快晴の下、展望を欲しいままにしての、長閑な稜線漫歩だ。大障子避難小屋の前で、渓流足袋を脱ぎ、軽登山靴に履き替える。ここで、オジカ沢ノ頭方面から降りてきた登山者に、追い抜かれる。なおもタルんでいると、今度は、単独者が万太郎山方面から下ってきた。しばし話し込む。彼の話では、昨夜、この避難小屋が満員で、中に入れて貰えなかった年配夫婦がいたそうだ。

 重い腰を上げ、万太郎山へ向かう。途中、数人の登山者と擦れ違い、万太郎山頂でも、中年女性3人パーティと、昼寝をする単独男性がいた。万太郎山は展望良好で、浅間山、日光白根山や巻機山・越後三山方面も見えた。毛渡乗越から赤谷川徒渉点への下降路が不安なので、早々に出発する。万太郎山から毛渡乗越まで、30分ほど要した。

 毛渡乗越から、草地を下降する踏跡を辿る。適度にジグザグを切って、踏跡は続いている。迷うほど薄くはないが、樹林帯に入るまでは、慎重に辿る方が良いだろう。笹を掴んでブレーキをかけながら、下って行く。樹林帯に入ると、防火帯のような切り開き状が、ほぼ一直線に下っている。ドウドウノセンの大高巻きで紛失した、ステッキが惜しい。

 最初に横断する小沢は、奥に5m滝を懸け、休憩に良い。二つ目の小沢を渡り、三つ目の小沢には水流が無かった。これらは、峠ノ滝ノ沢であろうか。さらに下って行くと、展望台と言うべき場所があり、左手に立派な滑滝マワット下ノセンが見える。エビス大黒沢を渡ると、やがて出合の2段12m滝の右岸を巻いて、さらにその下の8m滝も巻き下ると、徒渉点の川原に出る。

 さすがに、濡れずに渡るのは無理なので、渓流足袋に履き替えて、本谷を徒渉する。一昨日幕営したミニ川原で、最後のパッキングをして、左岸杣道に登り返す。まだ15時過ぎなので、この分だと明るい内に車に戻れそうだ。

 結構悪いトラバース杣道を辿り、途中年配の単独男性と擦れ違い、ちょっと驚く。30分余りで林道終点に至る。あとは、ひたすら我慢の林道歩き一時間強で、川古温泉裏の林道ゲートに辿り着いた。明日、笹穴沢辺りを溯行するらしい、男女ペアの車が到着する。連休中日だというのに、帰りの関越道は、ずっと混んでいた。

溯行図

アルバム

滝見亭・北関東の滝」に滝写真集「赤谷川本谷'02-10」があります

マワットノセン
マワットノセン
右岸熊穴沢出合滝
裏越ノセン
裏越ノセン
裏越ノセン
裏越ノセン
8m滝
8m滝

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