トムラウシ山ナキウサギ撮影行(大雪)

MR359 トムラウシ山ナキウサギ撮影行(大雪)

date 1997/7/21-25 晴、快晴、快晴、快晴、快晴
コース トムラウシ温泉短縮コース登山口〜南沼幕営地(4泊定着・トムラウシ山登頂・ナキウサギ生息地撮影行)(往復)
実働 第1日8h03m、第2日1h20m、第3日4h35m、第4日1h25m、第5日4h57m、計20h20m。
メンバー すうじい、I君
概要 トムラウシ温泉基点、南沼幕営地にベースを張り、トムラウシ登頂とナキウサギ撮影。
行程 →:山道、:溯行、\\:藪漕ぎ
【7月21日】 晴
オソウシ温泉鹿乃湯荘4:40=5:45トムラウシ温泉短縮コース登山口6:50→7:15駐車場分岐7:20→9:55カムイサンケ川10:15→11:13コマドリ沢出合11:40→12:05雪渓上12:15→13:10前トム平13:30→14:25トムラウシ公園14:40→16:10南沼幕営地(泊)

【7月22日】 快晴
南沼幕営地3:55→4:10トムラウシ山4:45→4:55南沼幕営地7:20→7:50撮影ポイント14:25→14:50南沼幕営地(泊)

【7月23日】 快晴
南沼幕営地3:35→3:55トムラウシ山4:40→5:10南沼幕営地6:55→7:40北沼北畔7:50→8:35岩石斜面9:00→クワウンナイのコル9:30→9:45撮影ポイント15:35→コル15:45→北沼北畔16:40→17:05南沼幕営地(泊)

【7月24日】 快晴
南沼幕営地6:45→7:10撮影ポイント11:10→11:30南沼幕営地13:50→14:15撮影ポイント17:40→17:55南沼幕営地(泊)

【7月25日】 快晴
南沼幕営地6:05→6:50トムラウシ公園7:00→7:30前トム平7:50→8:20雪渓上8:30→8:45コマドリ沢出合9:25→11:20カムイ天上11:30→12:15駐車場分岐12:25→12:42短縮コース登山口12:55=13:20トムラウシ温泉東大雪荘(入浴)14:40=15:25屈足温泉(泊)
記録  昨年10月の岩石山では、ナキウサギの姿を全く見ることができなかった。そこで、今回、彼らの城塞トムラウシ山に、花の季節を狙い、重い撮影機材を背負って出掛けたのであった。大雪最奥の山とは思えないほどの人出であったが、天上の楽園とも言うべき、お花畑の真ん中のキャンプサイトに、4泊も定着し、思う存分、ナキウサギの姿を追い求めた。

【7月21日】 晴
 朝昼2食分のオニギリ弁当を用意してもらって、薄明るくなったオソウシ温泉を発つ。約1時間で、トムラウシ温泉短縮コース登山口駐車場に到着する。何十台もの車が停めてあるのに驚く。背負子に大荷物を括り着ける。撮影機材だけでも13kgあるのだ。準備して出発するまで、1時間程かかる。

 笹を刈払いした登山道を、ゆっくり登り始める。トムラウシ温泉コースと合流し、少し傾斜が増す。カムイ天上手前で、樹林の切れたあたりの泥溝状の登りが辛い。下ってくる人々が増え始める。カムイ天上からカムイサンケナイ川沿いまで、地図では滑らかにトラバースしているが、実際には、かなりのアップダウンを繰り返しつつ下っているのだ。

 途中、前トム平からトムラウシ山付近の稜線が眺められる。伏流したカムイサンケナイ川の川床に降り着いて少し行くと、水が出ているところがある。冷たい水を得て、休憩する。川沿いの道を更に1時間ほど行くと、コマドリ沢出合で、大休止する。

 ここからはコマドリ沢の雪渓の上を登り、やがて沢を離れ、巨岩帯を横切り、チシマギキョウやイワブクロの間を登って、前トム平に至る。重荷を下ろし、足元の高山植物群を撮影しよう。新ハイキングのパーティの、やたら騒ぐオバチャンが、「こんな所で写真撮ってちゃダメダメ、上に行ったら凄いんだから。」と、偶々遭遇した知り合いに説教している。見回せば、トムラウシ山がだいぶ近づいた。

 這松の間を登り、ケルンの尾根からトラバースして、巨岩帯の上のコマクサ咲くピョコタンを越すと、トムラウシ公園の池の畔に降りる。美しいところだ。肩がかなりホキッているので、景観を楽しむどころではないが、少しずつタルんで登りを持続する。

 這松帯をもうひと登りすると、第二公園で、ここからはコマクサも見られる砂礫帯となる。16時を過ぎ、もう駄目だというころ、お花畑を行く道の傾斜が緩くなり、南沼幕営地のテントが見えてきた。

 南沼幕営地は、雪田からの流れに間近な、お花畑のど真ん中にある別天地である。なるべく平坦なサイトを捜し、ゴアライトを設営する。4泊するベースなので、フライもしっかり張っておこう。近くの岩々帯からは、ピキーの声が聞こえ、小鳥も多い。

 今日はもう十二分に疲れ果てたので、トムラウシ山頂のハントは、やめにする。夕方、I君が数えたら、二十数張のテントがあった。さあ、無洗米を炊いて、お待ちかねの夕食だ。

【7月22日】 快晴
 3時55分、まだ眠っているI君をテントに残し、日の出の山頂を目指す。ゼーゼー言いながら駆け登るが、山頂では、既に日の出の後であった。4時には出るらしい。でも、なんて素晴らしい山頂なのだろう。大雪の山々、十勝連峰、石狩ニペソツ方面、そしてトムラウシを巡る残雪と沼と岩々。四回目の山頂も晴れている。

 ビデオでも、写真でも、自分の目でも、四囲の景色を満喫して、山頂を辞す。サイトへ戻り、寝ているI君を起こして、朝食にする。雑炊は、やや持て余し気味だ。

 朝食の後、ナキウサギの撮影に出掛ける。背負子に撮影機材を括り付け、北沼方面への道を行く。幕営地の水源雪田に続く沼の周りには、美しいお花畑が広がる。見当を付けた最初のポイントの窪地へ降りてみる。ここなら、登山者に邪魔されず、岩々していてウサギも居そうな場所だ。

 時折、ピキーの声がする。じっとして待つが、次第に陽射しが強くなり、喉はカラカラ、半袖の肌はピリピリ、頭もクラクラしてくる。日陰が全く無いのだ。水筒の水はどんどん減ってゆく。それでも根性で粘り、チョロチョロ走るナキウサギを、何度か目撃できたし、撮影にも成功した。14時半頃、暑さに負けて、幕営地に戻ることにする。

 再び、沼の畔の美しいお花畑を通って、サイトに戻ると、冷たい水で、飲物をこさえて、テントの中で涼むとしよう。この時間では、周りのテントの数は、少ない。夕方まで、ウダウダして過ごす。縦走してきたパーティのテントが増えてくる。

 夕方になると、雲とガスが出始めて、アーベントロート(夕焼け)は駄目そうなので、山頂へは登らないことにする。テントの数は、昨日と同じくらいだ。今日は、早めの夕食にしよう。

【7月23日】 快晴
 今朝も快晴だ。I君を叩き起こして、日の出とモルゲンロートを見に、山頂を目指す。3時55分、山頂着。三脚を立て、デジタルビデオカメラと一眼レフを交互に構える。残念ながら、日の出は、今一つであった。パノラマを十二分に堪能してから、下り始める。帰り道でも、十勝連峰方面の眺めがよい。

 朝食を済ませ、昨日より少し早めに、撮影に出掛ける。一昨年の九月、クワウンナイ川源頭で、余りに疲れ果てて、ナキウサギを撮影する気力が失せてしまったのだが、その場所を目指そうというのだ。例の美しい沼畔のお花畑を抜け、北沼に出る。雪が残り、ここも絵になる風景だ。北沼北畔のお花畑では、エゾコザクラの濃いピンクが美しい。砂礫の丘を越えると、荒れた草地の緩やかな下り坂となる。そこここで、小鳥が囀っている。台地の端まで来ると、足下に岩々帯の斜面、その先には数々のロックガーデンが見渡せる。

 ここから、岩々大斜面の大下りで、帰りのことを思うと、ちょっと躊躇する。中程まで下ると、左手からピキーの声がしたので、カメラと三脚を用意する。しかし、姿は見えなかった。通りすがりのオジサンが、犬コロを呼ぶように、口笛を吹いたけど、そんなんでナキウサギが出てくるわけ無いぜ。思わず苦笑してしまった。さらに下ると、岩々が大きくなり、道はアップダウンを繰り返して、クワウンナイのコルに至る。

 実は、ここの周囲の斜面の岩々に、狙いを定めてあったのだ。行動食を摂った後、今日の最初のポイントに、1時間ほど粘ったが、巣の玄関前だったためか、全く声も姿も無い。そこを諦めて、20m程戻った所へ移動する。チングルマやキバナシャクナゲの美しい所で、腰を据えて粘ることにする。昨日の半袖での日焼けに懲りたので、今日は暑くてもセーターを着ておくことにする。

 1時間余りたった頃だろうか、10m程のところで鳴き声がして、望遠レンズで捜すと、テラス状の小岩の上に蹲るナキウサギの姿があった。姿勢を低くして、岩陰に身を潜めつつ、にじり寄る。何とか5m程の距離まで近付いて、三脚を2本並べ立てる。2倍テレコン付のVX-1000と、500mm超望遠ズームの一眼レフをセットする。ビデオを撮りっぱなしにして、写真のシャッターを切る。この小岩がここの巣の見張り台なのか、何度も何度もこのテラスに出没し、結構長い時間、姿を見せてくれた。また、もっと上の方にある、菜園(?)に出掛けて、草を食べるシーンもあった。かなり満足できた。

 15時半過ぎまで頑張って、このポイントを後にする。コルまで辿り、巨岩帯を進み、大斜面を登り返す。北沼北畔まで来ると、挙動不審の男性二人がいたが、キャンプ禁止の場所に、どうやら幕営しようとしているらしい。構わずに、サクサク南沼幕営地を目指す。撮影地から1時間半で、帰着する。

 やはり夕方になると、ガスっぽい。今日も運動したので、おなかが空く。お茶を飲んだら、すぐに夕食の準備だ。

【7月24日】 快晴
 今朝は、山頂をパスする。朝食後、一昨日のポイントに出掛ける。ナキウサギの巣がどの辺だったのか、何処も似たような岩々なので、よく判らない。すぐ足元、2-3mのところをチョロチョロして、撮影できないことも何回かあった。少し離れた菜園(?)へと、食事に出掛ける習性があるようだ。巣と思しき辺りのテラス状の小岩に、ナキウサギが横になったので、こっそり近付いて、手持ちでカメラを構えたら、四本の脚を投げ出して、完全に昼寝の体勢に入ってしまった。バシバシ撮りまくったが、シャッターの音も気にならないようであった。

 お昼には、撮影機材を残して、いったん幕営地に戻り、食事休憩する。午後にも撮影に出掛ける。十分な撮影は難しいが、ある程度の観察はできたと思う。体長10cm程度の動物を、観察するだけでも大変なのに、よくぞ撮影できたと思わねばなるまい。今日は、17時40分まで粘り、未練は多少残るが、そこそこ満足してサイトに戻る。

【7月25日】 快晴
 今日は下山の日だ。朝食を済ませ、撤収して、背負子に重荷を括り付ける。幕営地を後にすると、十勝連峰の眺めが良い。少し下ると、コマクサも咲いていて、背負子を下ろして撮影する。その先で、シマリスが足元を駆け抜けた。トムラウシ公園で小休する。ケルンの尾根を過ぎ、前トム平で最後の展望を楽しもう。

 コマドリ沢の雪渓上で休憩していると、隣のテントだった「熊さん」(I君命名)が降りてきた。雪渓は、登りの時と比べて、随分痩せた。コマドリ沢出合で、大休止する。ここでは、どのパーティも休憩するようだ。

 カムイサンケナイ川沿いの道を下り、伏流した沢から離れる辺りの木陰でタルむ。ここからが、アップダウンの激しい、カムイ天井までの登り返しなのだ。モロに重荷が堪える。中程で一度小休する。カムイ天井で小休した後、下りが始まると、余計に重荷が肩に堪える。こまめに小休を入れ、駐車場分岐まで来ると、さすがにホッとする。最後の元気を絞り出し、荷を担ぐ。

 駐車場の車は、予想通り、直射日光で熱くなっている。開放して風を通す。荷物を整理し、靴を脱ぎ、トムラウシ温泉へ下ろう。途中の展望台に寄り、30分ほどで、東大雪荘に至る。温泉に入って汗を流し、鹿の焼肉丼を食べた。今日の宿の、屈足温泉トムラ登山学校レイクインへ向かう。

 翌日、'94年に行きそびれたヌプントムラウシ温泉にも、出掛けてみたのであった。

アルバム

【一日目】
短縮コース登山口付近からトムラウシ山
コマクサ
イワブクロ
チシマギキョウ
前トム平付近
トムラウシ公園
トムラウシ公園
エゾコザクラ
エゾコザクラ
ミヤマキンポウゲ
キバナシャクナゲ
イワヒゲ
コマクサ
【二日目】
トムラウシ山頂からの朝日
トムラウシ山頂から朝焼けの大雪山系
十勝山系方面
山頂から西方を望む
山頂より北方を望む
ナキウサギ
ミヤマキンポウゲ
イワウメ
エゾコザクラ
キバナシャクナゲ
少し赤味を帯びているが・・・
ナキウサギ
ナキウサギ
葉っぱを咥えて
食べ始めたぞ
ムシャムシャと
まだ咥えてる
昼寝するナキウサギ
完全に寝落ちした、無防備な奴
偵察中
少し寛いでいる
【三日目】
山頂より東大雪
山頂より大雪山系
山頂より十勝連峰
十勝連峰と三川台方面
十勝連峰
北沼かな
エゾコザクラ
キバナシャクナゲ
ナキウサギ
ナキウサギ
ナキウサギ
ナキウサギ
上の菜園に出掛けたナキウサギ
上の菜園から見張る
【四日目】
見張りのはずが
だんだん眠くなり
身体が横になり
動かなくなり
寝てるでしょ
お昼寝タイム
ナキウサギ
【下山日】
キャンプ指定地付近から十勝連峰
コマクサ
前トム平付近にて、ミネズオウ
イワブクロとミネズオウ

MR332_ クワウンナイ川・化雲岳(大雪)1995/09/08-13

の表紙へ
本館トップページへ