泙川小田倉沢・湯之沢ナメ沢下降・湯之沢本流・皇海山(足尾)

MR173 泙川小田倉沢・湯之沢ナメ沢下降・湯之沢本流・皇海山(足尾)

date 1983/7/8-10 
コース 切通し〜奈良〜小田倉沢〜ナメ沢下降〜湯之沢本流〜皇海山〜鋸山〜六林班峠〜庚申山荘〜一ノ鳥居〜銀山平〜原向
実働 第1日:13h39m、第2日:9h10m、第3日:2h10m、計:24h59m。
メンバー すうじい(単独)
概要 '83泙川シリーズ第一弾、小田倉沢からナメ沢下降で湯之沢本流へ、皇海山から六林班峠経由で銀山平へ。
行程 =:バス・鉄道、→:山道、:溯行、\\:藪漕ぎ
【7月8日】 雨のち曇のち雨
沼田2:30=3:13切通し4:20→奈良5:35→5:50小田倉沢出合6:201110二俣9:2011:14 1410二俣11:25\\12:55 1850乗越13:051610二俣15:05ナメ沢出合18:1518:50 BP(泊)

【7月9日】 曇のち雨
BP 5:50広沢出合6:00鈴小屋沢出合6:301410二俣7:501700付近涸棚25m 9:25\\9:45縦走路10:00→10:50皇海山11:00→12:05鋸山12:15→13:00六林班峠13:05→13:45境沢右俣徒渉点14:15→15:30庚申山荘15:40→16:20一ノ鳥居(泊)

【7月10日】 雨
一ノ鳥居3:50→銀山平4:40→6:00原向6:23=7:34相老
記録  一昨年の7月に、松木川仁田元沢〜庚申山〜皇海山〜袈裟丸山のコースで山行をし、足尾の自然に魅せられてしまった。鹿の多さが足尾である。前回は、渡良瀬川側を垣間見たので、今回は泙川流域を歩いてみることにした。ここしばらくは、泙川流域を集中的に溯行してみようと思っているが、今回は、その第一弾というわけである。

【7月8日】 雨のち曇のち雨
 例の2207長岡行に乗り込む。「ゆ」先輩にアドバイスされてたんだけど、釣道具を用意しなかったことが、後悔されることになるとは・・・。沼田から、すぐに尾瀬行のバスが出る。切通しの分岐で下車し、バス停の待合所で雨をしのぎ、薄明るくなるまで仮眠。

 切通しから、1時間15分の林道歩きで、奈良の下降点に着く。釣師道を辿って15分、小田倉沢出合の川原に降り立つ。地下足袋に履き替え、泙川本流を徒渉する。小田倉沢は、しばらく川原が続く。初めて出会う3m滝を越えると、沢は右へ屈曲し、右岸に見事な涸棚が懸かる。6m滝を右手のガリーから巻く。右岸の岩壁の下に岩小舎があり、利用できそうだ。

 大ゼン2段20mスダレは、大釜が埋まって、腿までつかって横切り、右壁を登る。滝上で振り返ると、釣師が二人、釜を横切っている。急がねば。美しい滑床を過ぎると、再び川原歩きとなる。888二俣までは、割と平凡だ。

 888二俣を過ぎ、右岸からカレ沢が出合うと、右岸は柱状節理の30M壁となる。さらに進み、12m、8m、7mヒョングリの滝があり、いずれも上部がナメになっている。左岸から(5:1)の枝沢が、20mスダレ滝で落ち合う。再び左岸から、奥に2段7m滝を懸ける枝沢が出合うと、4m2条滝を越え、左岸から10m凹角滝の枝沢を迎え、いよいよ核心部のゴルジュだ。

 入口の6m上ナメを、右岸から巻く。出口の3m滝の釜(トロ)を、右岸でヘツる。残置ボルトあり。正面からトヨ状小滝の枝沢が出合い、本流は左から小滝で出合う。(5:1)の1110M二俣である。左の本流を溯る。大きな釜で、いかにもいそうな所には、それらしい魚影が見られる。10m滝を左から巻き、その上のナメで、流れの中でミズスマシのように泳ぎ回り、潜る「ビーバーネズミ」に、しばし見とれる。トヨ状小滝を越えると、左岸に鉄砲跡がある。最後に15m滝だが、これがどうやら魚止らしい。左岸から巻く。

 沢筋の傾斜は緩くなり、行程はひたすら長く感じられる。足は重くなり、腹は空き、ゴーロ状は歩き辛いし・・・。右岸に小屋跡が見られる。やっと、1410Mの(1:1)二俣に到着。左に入ると、すぐに水が涸れるので、水を汲む。ゴーロをひたすら登る。左岸にガレが見えるあたりは、沢筋は浅く広く明るく、牧歌的でありさえする。鹿の群が幾つか現れ、キィーッと悲鳴を上げては、去って行く。右岸は落葉松の植林で、その中の鹿道を拾って進む。

 1720M二俣の同定は難しく、勘で決め、入口の立木に赤テープを巻いて、左に入る。すぐに窪筋は不明になり、薮の薄い所を選んで、登って行く。1720M二俣から20分で、1850M乗越に、ドンピシャで飛び出す。薮もない、静かな尾根だ。

 まだ午後1時なので、ナメ沢を下れるだけ下ってしまおう。乗越から東へ、トラバース気味に鹿道を辿って行き、小尾根を一つ越すと、なんとか下降できそうなガレ窪を横切る。鹿道は更にトラバースを続けているので、もっとましな下降点があるかもしれないが、ここから下ることにする。

 ガレと左岸のブッシュとのコンタクトライン沿いに、下る。2回崖の上に出て、左岸をターザンして下る。涸棚7mをクライムダウン(以下cd)すると、その下に、オーバーハング(以下OH)した10m涸棚がある。左岸の小尾根に取り付いて、慎重に下る。続く涸棚6mOHは、右岸を木の根をホールドにして降りる。2段10m涸棚を下り、左岸からカレ沢を合わせると、涸棚15mOHにぶつかる。これは巻きようが無さそうなので、仕方なくザイルを出し、15mの懸垂下降。その下は、ちょっとした連瀑になっていて、水流が現れる。cdしてゆくが、一番下の7mチムニーに手こずる。

 これを下って、やっと1610M奥ノ二俣だ。乗越から2時間で、250mしか下っていない。平均斜度29度の急さであるから、まあこんなものか。ここから下は、少し緩くなる。下ってきた右俣に比べ、左俣の方が快適そうに見えるのは、気のせいか?。左:右=(2:1)の水量比だ。

 1500Mから1400Mにかけて、連瀑帯となる。階段状の滝が多く、下り易い。2段8m滝の上でワラジを替え、右岸を高巻く。その下のナメを過ぎると、両岸が柱状節理の壁となる。8m階段状は左壁(右岸)をcdすると、ナメとゴーロが交互に現れ、ペースが上がる。5x8mトヨ状の先で、左岸に潰れ掛けた仮小舎がある。やがて、沢幅いっぱいの明るい滑床を過ぎ、左岸からルンゼが出合って、いよいよお待ちかねのナメ滝25mだ。

 両岸はスラブ状の壁になっている。傾斜はそれほどきつくないので、登ることは出来そうだ。高巻きは大変そうなので、上部の傾斜の緩いところから、左岸へと水平にトラバースし、草付のバンド状を慎重にトラバースして、樹林の中の鹿道を下る。明るい滑床をヒュンヒュン下ると、出合の2段滝になる。

 18:15、(4:1)のナメ沢出合から、すぐさま湯之沢本流を溯る。広沢出合までは無理そうだ。3m滝を左から越え、次の6m斜瀑は、水流が強くてとても太刀打ち出来そうもないので、右から巻いて、懸垂下降2mで滝上へ。あとはもう、ただがむしゃらに、先を急ぐ。あたりが薄暗くなって、もうダメじゃ、という頃に、右岸に草地の台地があった。

 ここを、今宵のビバークサイトに決定。僅かな枝で焚火を試みるも、雨の中では気合い不足で、うまくいかない。もうイイやと、ツェルトに潜り込む。米1合半と味噌汁のみの夕食後、22:00の気象通報まで頑張り、オヤスミ。

【7月9日】 曇のち雨
 朝3:40に目が覚めるまで、夜中に一度も起きなかったのは、私にしては珍しいことだ。よほど疲れていたに、違いない。餅三個入りのウドンを食べる。昨夕は、現在位置が良く判っていなかったので、位置確認してから出発する。

 10分で、広沢出合のゴーロに着く。右岸から赤根沢が(1:5)で出合い、さらに行って、鈴小屋沢との(3:2)の二俣に至る。ナメ同士が出合う、美しい二俣だ。左の鈴小屋沢の方が、本流よりも水量が多い。右の本流を進む。5x7m滑滝を越えると、ゴーロ帯と倒木帯が多くなる。2段5m、4mスダレを越え、左岸から(10:1)の枝沢が出合い、4m滝を越すと、再び倒木とゴーロだ。

 滑床・滑滝連続の後、左岸からガレと倒木が大量に押し出され、(10:1)の枝沢が左岸から20m白糸の滝を懸ける。右岸から枝沢を1本迎え、ゴーロを行けば、やっと(3:1)の1410M二俣だ。右俣には、赤土のガレが見えている。左の本流を進む。右岸に3本の枝沢を迎えつつ行くと、鹿の声がこだまする。

 連続する滑滝を3つ4つ越え、そのあと小ナメが続く。10m階段状は楽に登れるが、4mOHは右より小さく巻く。8m滝は右壁より取り付くが、シャワーにめげて引き返し、左手から巻く。直登はそのまま水線右に寄って、シャワークライムするのであろう。そこからわずかで、涸棚25mOHに突き当たる。取り付くシマもないので、東へトラバースし、小尾根に取り付いて、鹿道を辿って登る。尾根が広くなり、南南東へ鹿道を拾い、20分後に縦走路へ出る。

 皇海山をサブし、モミジ尾根から松木川へ下る予定だったのだが、雨が降り出し、雷もゴロゴロ言い出した。松木川の川原での、雷雨による増水と落雷を怖れる。皇海山越えで下山することにして、一度デポしたザックを背負う。山頂までの50分間は、苦しい登りであった。皇海山頂からは、不動沢ノコルを経て、鋸山へ登り返す。庚申山への尾根筋縦走は、いかにも雷様の標的になりそうなので、六林班峠へ迂回する。

 六林班峠からは、水平登山道を、庚申山荘へ向かう。軌道跡だけあって、殆ど平坦で歩き易い。ガレや沢の横断箇所は崩れていることがあるが、なんとか行ける。今日中に下山しようと飛ばすのだが、このトラバース道は長い!。庚申川境沢は、1540M二俣より上部の1600M付近で、トラバース道に出る。境沢の右俣を渡る所で、左岸の登山道を見落として、50m下の二俣まで下ってしまい、登り返す。これは消耗した。あともう一箇所、水面沢の西側の尾根(1681の下に続く尾根)上の踏跡を、下山路と間違えて、少々ロスタイム。一向に下る気配が無いので、引き返す。

 そんなことをするうち、やっと庚申山荘に着いて小休。テント場も無さそうだし、どうするべえ。今日中に帰るのはシンドイし・・・。と思案するうち、雨が本降りになって、追われるように下って行く。サイトを捜しつつ行くが、適当な場所がない。遂に一ノ鳥居(登山道入口)まで、下ってしまう。すると、屋根だけの休憩所があって、大きなテーブルが置いてある。うん、これだ!。テーブルの上に、ツェルトを張ってしまう。

 夕暮れに現れた、招かざる客に、鹿たちが面食らって、ガサゴソ、キィーッとやっているようだ。ごめんね。水面沢の流れも近いし、雨も完璧にしのげるし、テーブルが傾いていることを除けば、最高だぜい!。

【7月10日】 雨
 始発の列車に乗るべく、3:50発。ヘッドランプを点けての林道歩き。丸石沢を渡る所がゲートで、釣師の車が2台。50分で銀山平に至る。ここは、自然に恵まれた、静かなリゾートのようだ。ここから、さらに1時間20分で、原向の無人駅に至る。途中、何台もの釣師の車と擦れ違った。

 さて、庚申川は水量豊かで、トロやゴルジュが発達しており、両岸は急な崖となっていることが多い。当初、この川を下降する計画だったが、変更しておいて正解だったと思う。晴れた真夏に、泳ぎながら溯行するのが良かろう。肌寒い日曜の朝、列車を乗り継いで帰京したのであった。

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その1:
泙川小田倉沢
概念図 小田倉沢
溯行図
その2:
湯之沢ナメ沢下降
湯之沢ナメ沢
下降図
その3:
湯之沢本流〜皇海山
〜六林班峠〜原向
湯之沢本流
溯行図

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