実川赤倉沢右俣・黒沢魚沢下降(帝釈・奥鬼怒)

date 1982/7/24-25(26下山)(2泊2日)
コース 七入〜実川林道〜矢櫃平〜実川赤倉沢右俣溯行〜縦走路〜黒沼田代〜魚沢下降〜魚沢林道〜黒沢林道〜女夫淵温泉
実働 第一日:4h19m、第二日:7h50m、第三日:10m、計:12h19m。
メンバー ゆ先輩、すうじい
概要 杣道もあり、楽しい沢旅、黒沼田代から、滑が続く魚沢下降。
行程 =:バス・鉄道、→:山道、:溯行、\\:藪漕ぎまたは詰め
【7月24日】 曇のち雨
北千住7:20=9:03下今市9:13=9:45新藤原10:14=七入13:13→実川林道終点13:57→14:00川原14:15→東電監視小屋14:35\\川原14:4515:00休15:1515:47黒溶沢出合15:55「入りヒヨドリ」入口16:10→17:10「ザル滝入口」17:25ザル滝下17:40\\ザル滝上18:0018:25硫黄沢・赤倉沢出合(泊)

【7月25日】 雨
硫黄沢・赤倉沢出合9:05二俣9:15大滝15m 10:0010:25 1686M二俣10:40\\縦走路12:10→黒沼田代下降点13:02\\黒沼田代13:15\\三俣14:2815:30 9m滝上15:35\\→魚沢林道終点15:43→16:45魚沢林道始点17:00→17:30女夫淵温泉手前川原BP(泊)

【7月26日】 雨
女夫淵温泉手前川原BP 9:20→9:30女夫淵温泉9:45=11:00新藤原11:20=13:45北千住
記録  南会津・帝釈山脈は、私の心惹かれる山域の一つである。源流部に湿原を有する支流を、数多く持つ実川は、とりわけ憧憬の念を懐かせる。また、鬼怒川上流部の支流、黒沢の二つの支流:赤岩沢と魚沢は、その源頭に黒沼田代を共有しており、何時の日か、溯行・下降で繋いでみたいと思わせる。

 今回の山行は、檜枝岐は七入から、実川を遡行し、最奥の支流赤倉沢から黒岩山の東面をトラバースし、黒沼田代へ下り、魚沢を下降して魚沢林道・黒沢林道を経て、女夫淵温泉へと、奥鬼怒側へ下山した。魚沢は、林道が出来ているのが残念だが、滑の続く美しい沢である。

【7月24日】 曇のち雨
 東武鬼怒川線利用の、cheepestな方法で、七入に至る。実川林道は工事中だが、通してくれた。林道終点から、実川の流れを渡って、矢櫃平の山道を行く。東電監視小屋付近から、藪を漕いで川原に降りる。

 最初の釜をヘツるのに、ワラジを着ける。これを越すと、左岸にケルンがあって、近くに2人パーティがテントを張っていた。インゼル状の小滝を過ぎ、右岸の枝沢を見送ると、左岸から(5:1)の黒溶沢が出合う。少し行くと、ゴルジュに出くわす。「入りヒヨドリ」と呼ばれるものだ。

 最初の2m滝の右を登って、落口を左へ渡ると、そのまま右岸に踏跡が続いて、高巻いている。この右岸の山道を行くと、眼下に、左岸から大支流:赤安沢の出合うのが見える。更に行くと、作業小屋があるが、戸が打ち付けてあり、利用できない。この辺で、ポツリポツリ、雨が降り始める。

 ゴキタ沢を渡り、滑の小沢を渡ると、道は本流の4m幅広滝の上に降りる。ここで山道は、左岸に渡り、この奥の「ザル滝」をまとめて大高巻きしている。我々は、本流通しを、溯行することにする。しばらく滑床が続き、クランク状に曲がった瀞ゴルジュをヘツると、3段のザル滝だ。

 右側の岩を流れが浸蝕し、トヨ状かと思えば、左側(中央)の岩の上を、スダレ状に水は流れている。左壁の草付を登って、3段一緒に高巻く。滑の続く流れを溯ると、右岸から枝沢が二本ほど出合い、しばらくして、硫黄沢・赤倉沢(1:1)の出合に至る。右岸にサイトを見出し、ツェルトを張る。焚火をして、濡れを乾かす。

【7月25日】 雨
 朝、しばらく釣り糸を垂れるも、戦果無し。赤倉沢に入り、5m滑滝を越すと、すぐに二俣で、右俣を行く。2段8mトヨナメは、左の草付を登って巻く。幾つか滑滝を越すと、大滝15mナメ状で、右を快適に登る。更に、滑床の続く流れを行くと、1686M二俣で、水量比(2:3)に分かれる。

 右沢を行くと、泥岩状の滑床が現れ、時折階段状の滝を交えつつ、高度を上げて行く。右に大岩のある10m滝を越すと、7m、7m、4mの階段状滝が続き、1800M付近で水流が二分している。やがて、平流となり、アザミ・ハリブキの宝庫となる。

 水が涸れてから、藪漕ぎ10分で、黒岩山北東の、1970Mコル付近の縦走路に出る。縦走路を、南へ向け歩き出す。黒岩山東面をトラバースする山道では、ウラジロヨウラク・ベニサラサドウダン・アカモノ・ハクサンシャクナゲなどが咲いている。

 やがて、赤岩沢源頭と思しき細流を横切って、少し行き、東へと下降すると、藪漕ぎ15分で、黒沼田代に至る。小さな湿原で、ワタスゲや、ツボスミレ風の花・ハクサンチドリ風の花が咲いている。南側の林の中に、流れを見出し、魚沢へと下降開始。

 しばらく行くと、笹藪の中の泥溝状となり、やがて伏流する。再び水流が現れ、小滝を幾つか下ると、Y字状滑滝となる。左岸のブッシュをホールドにして、慎重に下る。それから、滑滝と滑床の連続で、三俣出合の8m滝に至る。

 右岸の小尾根を越え、中俣へ下降して巻く。三俣の水量比は、左から(3:1:2)で、左俣の2段20mトヨナメ滝は、立派である。我々の下ってきたのは、右俣である。7m滝を苦労して下り、釜を持つ美滑を過ぎると、右岸から、2段10m滑の枝沢が出合う。

 滑床の続く流れは、しばらく東へ向かい、左岸のガレている4m滝を右岸から巻くと、流れは南東へ、蜿蜒滑床が続き、見事である。左岸から枝沢が出合うと、林道予定線の標識と思しき、赤ペンキマークがある。若干気分を害しつつ、8m滝を右岸から巻くと、小ナメが続く。

 ひょっとしたら、さっきの滝が、例の「10m滝」なのかしらん・・・などと思いながら、なおも行くと、伐採木で埋まった5m滑滝の下に、ドーンと9m滝があった。左岸側の落口には、新しいボルトとハーケンに赤いシュリンゲが付いており、今シーズン、この滝を懸垂下降したパーティがあることを示している。

 左岸前方には、魚沢林道が見えている。伐採木で埋まった5m滑滝を、ブツクサ言いながら登り返して、左岸の踏跡を辿ると、魚沢林道終点に至った。魚沢林道終点は、1550M付近で、今回、高度計が結構有能だったと思われる。

 ゆ先輩の「林道脇の植物」解説を聴きながら、ひたすら林道を下る。ノリウツギ・ソバナ・ヒヨドリバナなどが咲いている。やがて、黒沢本流を渡って、黒沢林道に合流する。どうせ終バスには間に合うまい、と考えて、女夫淵温泉手前の川原に、サイトを見付ける。

 川原のサイトで、焚火を真夜中までやるが、雨が降ったり止んだりで、乾いた頃に濡れ始めるので、なかなか寝るチャンスを掴めなかった。

【7月26日】 雨
 女夫淵温泉のバス停へ行ってみると、なんと、昨日は終バスに間に合っていたらしい。観光タクシーの運転手が、一人1800円で乗らないか、としつこいので、乗ることにする。ゆ先輩は、運転手の情報(おしゃべり)が有益だったとおっしゃるが、私には耳障りこの上ないものであった。

 新藤原から、直通の快速浅草行に乗る。ビールを飲むと、濡れて寝不足だったためか、いつしか眠ってしまっていた。

概念図

溯行図

渓流の部屋
の表紙へ
本館トップページへ